『ヴィンランド・サガ』が描き出す現代の世界情勢で大事な視点とは? ※ややネタバレ含む

『ヴィンランド・サガ』が描き出す現代の世界情勢で大事な視点とは? ※ややネタバレ含む
     

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今の世界情勢について皆さんも色々と思うところがあるのではないでしょうか?

東京オリンピックも控えた中、テロや戦争の恐怖に対して日本も他人事ではありません。

今回は民族や宗教の対立などによるテロや戦争の危険性も指摘されている、現在の世界情勢を踏まえた上で読んでほしい、月刊アフタヌーンにて連載中でアニメ化も決定した幸村誠作『ヴィンランド・サガ』が訴えかけるメッセージについて考えていきたいと思います。

『ヴィンランド・サガ』のあらすじ

千年期の終わり頃、あらゆる地に現れ暴虐の限りを尽くした最強の民族、ヴァイキング。そのなかにあってなお、最強と謳われた伝説の戦士が息子をひとり授かった。トルフィンと名づけられた彼は、幼くして戦場を生き場所とし、血煙の彼方に幻の大陸“ヴィンランド”を目指す!! 『プラネテス』の幸村誠が描く最強民族(ヴァイキング)叙事詩、堂々登場!

(C)幸村誠/講談社
引用元:Comee.net

11世紀の初頭のヨーロッパを舞台とした本作では、大きくわけて主人公“トルフィン”が北欧を中心に暴れまわった傭兵団であり、海賊でもあるヴァイキングと共に過ごし、過酷な戦場に身を置く1巻から8巻までの少年期と、その後奴隷の身となったところから始まる青年期の2つの物語で構成されています。

トルフィンは元々アイスランドで家族と共に幸せに暮らしていたのですが、父である“トールズ“が強制的に戦争に出向くことにった際、戦士へとの憧れから父にも黙って船に乗り込んでしまいます。
しかし、凶悪なヴァイキングの手にかかりトールズは亡くなり、復讐を果たすためにヴァイキングの仲間となり首領である“アシュラッド”の命を狙います。

その後、長年の戦場での過酷な現実を目の当たりにしたトルフィンは心を病んでしまい、ヴァイキングが壊滅した後にデンマーク軍から奴隷の身となってしまいます。
農場で生活を送る中で友を得て、農作物を自分の手で育てて生活していくことの重要性を知り、やがて身分の差や奴隷なども存在しない理想の国であるヴィンランドを求めますが、平和だったはずの農場にも戦争の魔の手は迫ってきていました。

復讐心や自らの過去との決別

この作品を通して描かれているのは戦場の過酷さと、それによって涙を飲む一般の人々の姿です。

当時のヴァイキングは荒くれ者の集まりということもあり極悪非道な行為を平気で働き、村などを襲っては罪もない人々を傷つけ、略奪の限りを尽くします。
その身勝手な暴力の前に村人たちは抵抗することもできず、ただただ黙って言うことを聞くか全てを捨てて逃げるしか道はありません。

トルフィンも当初から狙いはアシュラッドの命であったものの、少年時代はヴァイキングに属しており、多くの人を傷つける生活を送っていました。

青年期を迎えたころ、彼はかつての自分の行為に対して罪の意識が芽生えます。
しかしどれほど謝罪をしたところで亡くなった人は生き返らず、残された家族の恨みは消えることがありません。

そんな中で、トルフィンは暴力との決別と誰も傷つけないという誓いを立てますが、かつて名を馳せた一味の一員であったということを知る人が追いかけてきたり、戦争に巻き込まれてしまったりと簡単にはいきません。
剣を再び握って相手を傷つければ話は早いでしょうが、それでは暴力の連鎖は止まりません。

現代社会へのメッセージ

本作が描き出すのは過去の行いの贖罪と暴力からの脱却です。

1度起こしてしまった過ちというのはなかったことにはできません。
しかし、その過ちというのは大小あるにしろ、誰にでも起こり得るものです。

近年、国際社会はテロリズムなどの暴力の脅威にさらされています。
それは確かに、とても恐ろしい行為であり、誰もが忌避すべきものであるのは間違いありません。

しかし、そういった暴力に対して立ち向かうべきなのでしょうか?
その先に何か解決策はあるのでしょうか?

トルフィンは過去の過ちについて心から憎み、暴力を避けるために苦悩しています。
暴力の連鎖を避けるために! というテーマをもった漫画や物語は多くありますが、本作で描かれる姿を見るとそれがいかに難しく、そして大事なことなのかよく分かると思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

現代の暴力の恐怖に苛まれて閉じこもってしまいがちな国際社会の姿を知るたびに、本作を通して幸村誠が伝えたいメッセージ性はとても重要であると考えます。

もちろん、この問題に正解はありません。

トルフィンもまだ答えを見つけることはできておらず、難しい局面を何度も迎えています。

しかし、この難しい問題を少しでも考える手助けとして本作を手にとってみてはいかがでしょうか?

 

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