【吾輩は彩子である。名字はまだない。どこで名字を無くしてしまったのか見当がつかぬ。何でも『SLAM DUNK』という作品の中で、”湘北高校”バスケ部のマネージャーをしていた事だけは記憶している。】
思わず夏目節が出てしまう。
こんな衝撃的な事実を知ったのはつい最近だった。
湘北高校バスケ部のマネージャー・彩子の「容姿は?」と聞かれると帽子にスパッツ姿のあの姿が浮かぶが、「名字は?」と聞かれるとたしかに出てこない。
というわけで、今回は湘北高校バスケ部マネージャー彩子には本当に名字がないのかを検証始めたわけだが…
井上雄彦先生も彩子の名字ついてこう明かしていた!
まず、困った時のウィキ様。Wikipediaでとりあえず調べてみた。
《2年1組在籍、マネージャー。名字は紹介されていない。》
引用:SLAM DUNKの登場人物 – Wikipedia
ウィキ様がそういうのであるから、どうやら単なる噂ではないようだ。
僕も『SLAM DUNK』全巻にさらっと目を通し確認してみた。
やはり作中には「彩子」としか出ていないようだ。
さらにもっと突っ込んで調べてみると、『SLAM DUNK』完全版17巻で井上雄彦先生自身が彩子の名字について触れているという情報をキャッチすることができた。
さっそく、探す。
引用元:Comee.net
どうやら表紙カバーを外したところにそれは書いてあるという。
こんなとこにラフ画が!こんな仕掛けがあったなんて!
と発売から大分経ってるけど、今さらながらそれを知り、半ば興奮気味でカバーを剥がした。
あったよ!
三井寿の言葉を借りよう。
なぜおれはあんなムダな時間を…
引用:井上雄彦/集英社『SLAM DUNK 』21巻13頁
そこには核心に迫る一言が書いてあった。
《アヤコよ みょうじはないのよ かってにつけないでよ 》
やっぱり名字はないんだ。
ふーっスッキリ~って、さて、どうしたものか……考察に至る前に結論が出てしもうた……。
井上雄彦先生が「みょうじない」って言ってんだから無いんだ。
【この記事は死ぬ。ボツで振り出しに戻るのか。太平は書き終わらなければ得られぬ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。】
しまった。また夏目節が……これでは本当に『吾輩は彩子である』という小説が出来上がってしまいそうだ……。
いや、待てよ。
でも「かってにつけないでよ」ってどういうこと?
おっ、どうやら「太平」は得られそうだ。まだ検証しなければならないことできた。
出所不明の「中原」説は完全否定?
これはどうやら名字「中原」説のことを指しているようだ。
一部のファンの間では、彩子の名字は「中原」であるという噂が流れている。
テレビ放映やら映画化やら『SLAM DUNK』全盛のあの頃、次から次へとグッズ化された中で何かに「中原彩子」と記載があったとか。今となってはそれすらも真実かどうかは謎だ。
僕は井上雄彦先生が『漫画がはじまる』でこんなことを言っていたのを思い出す。
《『SLAM DUNK』がテレビアニメになるとき、いろんなキャラクター商品がいっせいに出たんですが「これ、全然花道に似てないじゃん」っていうものまで出てしまって、歯止めがきかないんですよ。それに耐えられなくて。だから、「これはOK」「これはダメ」というものを、自分でジャッジしたかったんです。コントロールはしないといけない、と。》
引用:井上雄彦/伊藤比呂美 2008年. 『漫画がはじまる』 スイッチ・パブリッシング ,147頁
『漫画がはじまる』は、井上雄彦先生と自称『SLAM DUNK』オタクの詩人 伊藤比呂美氏とのトークショーの内容がまとめられた本だ。
伊藤比呂美氏の歯に衣着せぬ軽快なツッコミで井上雄彦先生へと切り込んでいく様は読んでいて気持ちのいいものだった。
この本の中で、井上雄彦先生は著作権を出版社に預けず自身で管理している理由をそう語っていた。
つまり、17巻のあの彩子のボヤキも、そんな思いでチクリと書いたのではないだろうか。
『ピアス』のあやこ=彩子だとしたら―
では、『ピアス』のあやこも彩子とは別人だったのか。読者の中には同一人物だと考える人も多いけれど、これもまた「かってに」なのだろうか。
ちょっと待って!『ピアス』??『ピアス』って何よ??
そもそも井上雄彦先生の幻の作品『ピアス』をご存じない方も多いだろう。
『ピアス』は、『SLAM DUNK』の連載が1996年に終了し、その2年後の『週刊少年ジャンプ』1998年9号に掲載された井上雄彦先生の読み切り作品だ。
『週刊ヤングジャンプ』でも 2001年49号で再掲載がされたが、未だ単行本にも収録されていないため、幻の作品と言われている。
『ピアス』はこんな話
小学6年生のりょうたは海を見るために3年をかけて岩場に秘密基地を作っていた。
そこはりょうたしか知らない場所。
ココから海を眺めていたある日のことだった。
自分がいるとも知らず、海に何かを投げ捨てる少女の姿が。
あやこという少女だ。
汚すな―
海を汚されることを嫌ったりょうたはすぐに海に飛び込み、それを拾い上げあやこに返す。
すると、なんで拾ってくるのだと2人は殴り合いのケンカになってしまった。
海に投げ捨てたものは、あやこの母の交際相手が母にプレゼントをしたものだった。
あやこは母親との交際を認めたくなかったのだ。
争っているうちに、うっかりあやこに怪我を負わせてしまったりょうたは、他人を入れたことのなかった秘密基地にあやこを連れて怪我の様子を見たが大したことはなくホッとする。
あやこは連れられたその秘密基地の中で、投げ捨てたプレゼント箱を開けてみることにした。
中身は母親の趣向とは全然違うピアスだった。
これによりまた交際相手への不信感が増していくあやこだった。
りょうたはあやこからその捨てようとしていたピアスを取り上げ、「マイケルジョーダンもしてるから俺もする」と、ピアスホールのない耳にその場で穴をあけ、そのピアスを耳に付けようとする。
そのことでなぜか2人は打ち解けられた。
そして、りょうたがこの秘密基地でずっと待ってる人がいることをあやこに話す。
りょうたが3年間海を見ながら待ち続けている人とは―
あやこ=彩子だとしたら名前は―
僕はりょうたが秘密基地を作った理由を知った時、目頭が熱くなりました。
流石だなぁ~泣かせてきますよ、井上雄彦先生の漫画は。
『ピアス』がどの単行本にも収録されてないのが惜しい。惜しすぎる。
心情の変化と10代の葛藤を、40ページほどの短編でありながら見事表現しているこの作品は、井上雄彦先生の今後の作風のクサビとなったすごくイイ作品なのに……。
どうにか手に入れて皆さんも読んで見てください。
ちなみに僕は、『ヤングジャンプ』の再掲載の方の読み切りを持ってます。
ところで、このりょうたとあやこは、『SLAM DUNK』宮城リョータと彩子なのだろうか。
読んだ人誰しもが思う疑問だ。
ジャンプの方の『ピアス』の欄外には「彩子とリョータの秘密」という記載があったらしいが、20年も経った今、入手困難となった現物を確認することはできなかった。
作中にはそれを断言できる描写はない。
それでも、宮城リョータの左耳にもピアスがあって、顔もソックリときた。
宮城リョータの番外エピソードが『ピアス』だと考えた方が、ゾクっとする。
だからそういうことにしておこうと僕は思っている。
一方のあやこはどうだろう。
これは分からない。
顔も似てるといえば似てるし、似てないといえば似てない。
しかし、仮にあやこ=彩子だとしたら、彩子の名字考察にとって有力な情報が『ピアス』には載っていることになる。
というのも、あやこの母の交際相手の名前が『ピアス』の中で明らかにされているからだ。
その交際相手の名前というのが”佐々木”だった。
つまり、「あやこ」と「彩子」が同一人物であり、あやこの母がその後再婚したとすれば、彩子は「佐々木」姓を名乗ることになるのだ。
深いぜ!『ピアス』。
『SLAM DUNK』では「彩子」を何て呼んでいた?
さて、『SLAM DUNK』に話を戻そう。
まず部員たちは「彩子」を何と呼んでいたのかを確認した。
「彩子さん」・「アヤチャン」・「彩子」
呼び方は様々だったが、部員の口から名字が出てくることはなかった。
これは噂通りだ。
でもさすがに、安西先生までもが「彩子」と呼んでいるハズはないだろう…皆見逃してしまってるんじゃないの?と思って、1巻から安西先生のセリフを追ってみたが、安西先生はなかなか彩子を呼ばない……。
そして、ついに安西先生が彩子を呼ぶシーンを発見した。
それは、13巻の海南戦の湘北の正念場のシーンだ。
「彩子君」
引用:井上雄彦/集英社『SLAM DUNK 』13巻175頁
マジッすかっ!
安西先生ですら彩子のことを名字で呼んでいないことが分かり、もう彩子の名字探しに諦めがつく。
と、その時、ふと安西先生の言葉を思い出した。
あきらめたらそこで試合終了ですよ…?
引用:井上雄彦/集英社『SLAM DUNK 』8巻145頁
そうだ、この言葉で幾度と自分を奮い立たせてきたじゃないか!あきらめたらダメだっ!
赤木キャプテンが彩子を「彩子」と呼んでいる違和感
その時、僕は読み込んでいた時、初めて感じるある違和感を覚えたのを思い出した。
それは、今回「彩子」に注目しながら『SLAM DUNK』を読み込んでいた時のこと。
ちょっとした違和感だが、ココにヒントがあるのではないか。
その違和感とは、硬派バスケ一筋の赤木キャプテンが彩子を「彩子」と呼んでいるという違和感だ。
赤木キャプテンは、妹・晴子を「晴子」と呼ぶように、彩子を「彩子」と呼ぶ。
「桜木」・「小暮」・「三井」・「宮城」・「流川」
赤木キャプテンは部員ですら下の名前やあだ名で呼ぶようなことをしていない。
それなのに、彩子だけ「マネージャー」でもなければ「〇〇さん」でもしない。熟年夫婦ばりの「彩子」なのだ。
これまで何となく「彩子」だったが、改めて考えてみると違和感を感じるのは僕だけだろうか。
部員に同姓がいるのではないか。
そこで僕はこんな仮説を立ててみた。
部員に同姓がいるのではないか。
名字で呼んだら、2人とも振り向いちゃうあるある。彩子が入部してきて、そんな状況が部内で生まれてしまったのではないか。
とすると、彩子と名字がカブったのは一体誰だ?
赤木がキャプテンを務めていた当時、湘北高校のメンバーは12人在籍していた。そのことは『SLAM DUNK』単行本23巻の「#200 Aランク豊玉・Cランク湘北」の扉絵で描かれたメンバー表で分かる。
学年別に名前を挙げておこう。
■3年生
赤木剛憲(あかぎ たけのり)
三井寿(みつい ひさし)
木暮 公延(こぐれ きみのぶ)
■2年生
宮城リョータ(みやぎ リョータ)
安田 靖春(やすだ やすはる)
潮崎 哲士(しおざき てつし)
角田 悟(かくた さとる)
■1年生
桜木花道(さくらぎ はなみち)
流川楓(るかわ かえで)
石井 健太郎(いしい けんたろう)
佐々岡 智(ささおか さとる)
桑田 登紀(くわた とき)
この中に犯人はいるっ!(笑)
まとめ:犯人は…そうです。あなたですよ。
角田 :ちょ、ちょっと待って下さいよ。
三井:俺にはアリバイがある。
石井 :いや、僕にだってありますよ。
脳内でキャラクターたちがサスペンス劇場を始め出す。
ふふふ、いや、たしかに犯人はこの中にいます。
まず第一に、赤木キャプテンが「彩子」と呼び始めた時期です。。
赤木キャプテンの呼び慣れた感じからすると、4月ではない。
つまり、1年生は対象から外れることになります。
石井:ふーよかった。
となると、2年生・3年生に犯人はいる。
そこで、私は2・3年生の名字で、名字がカブる確率の高さを調べました。
■3年生
赤木:799位・24,200人
三井:533位・37,400人
木暮:1,631位・9,800人
■2年生
宮城:350位・58,300人
安田 :17位・158,000人
潮崎 :6,427位・1,500人
角田 :239位・91,600人
参考:「名字由来ネット」 https://myoji-yurai.net/
犯人は…そうです。
統計的にダントツで名字の多い人が1人だけいますね。
安田 靖春さん、あなたですよ。
「保田」の名字も含めれば、さらに名字カブりの確率は上がる。
赤木キャプテンが「ヤスダ!」と呼んで、2人とも「ハイ!」と振り向いちゃう事故が多発したんですよね。
これに嫌気がさした赤木キャプテンは「やすだ彩子」さんを「彩子」と呼ぶようになったのです。そして、部員たちもそれにならって「彩子」「彩子さん」と呼ぶようになった。
違いますか、保田彩子さん。
《アヤコよ みょうじはないのよ かってにつけないでよ 》
そうですよね…。
失礼いたしました。
謎は謎のままに…
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。
引用:夏目漱石『吾輩は猫である』/青空文庫<https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/789_14547.html>
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引用元:Comee.net
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