【ロングインタビュー】漫画家・東風孝広先生の仕事場に潜入!仕事場のこだわり大公開!

【ロングインタビュー】漫画家・東風孝広先生の仕事場に潜入!仕事場のこだわり大公開!
     
元少女漫画大好き芸人。
少女漫画歴22年、生涯で10000冊以上、5000作品以上の少女漫画を読んでいます。
男りぼんっ子です。男目線で少女漫画の魅力を語ります。
   

数年前、僕は東風孝広(こちたかひろ)先生という漫画家さんの元でアシスタントをやらせていただいてました。

実はComee mag.の僕のプロフィール画像も、東風先生に作画していただいた僕の似顔絵なんです。(めちゃくちゃ美化されてますが)

東風先生と言えば、『カバチタレ!』『特上カバチ!!』『極悪がんぼ』と、過去に3作品もドラマ化された人気漫画家さんです!

僕のような絵心もない未経験者でも構わず雇ってしまうほど超多忙な売れっ子作家さん。

今回は、そんな東風先生の仕事場に潜入取材をしてきました!

 

玄関のドアを開けると、麻雀牌に隠れた「東風プロ」と魔除けのシーサーが出迎えてくれる。

 

仕事場のこだわり、ドラマがヒットしたときのお話、今まで語られたことのなかった制作秘話やウラ話、漫画家としての今後の展望など、貴重なお話をたくさん聞いてきました!

 

【プロフィール情報】

東風 孝広(こち たかひろ)

高校卒業後、従兄弟であり現在の作品の原作者でもある田島隆さんの紹介で『ナニワ金融道』の作者青木雄二さんに出会い、アシスタントとして弟子入りする。
『ナニワ金融道』完結後、田島隆さんとタッグを組み『カバチタレ!』が誕生し、連載開始から約2年で『カバチタレ!』が実写ドラマ化され、大ヒットを記録。
そして約10年後には、続編の『特上カバチ!!』がドラマ化。
さらに4年後、『カバチタレ!シリーズ』と同時連載していた『極悪がんぼ』が月曜9時枠でドラマ化される。

 

最近の話

田舎: 東風先生、お久しぶりです!今日は聞きたいこと、知りたいこと、いっぱいありますのでよろしくお願いします!

東風: お久しぶりです。何でも聞いてください!

田舎: それでは遠慮なくいろいろ聞いていきますね!お会いするのめちゃくちゃ久しぶりですけど、最近どうですか?相変わらずお忙しいですか?

東風: 今は、隔週連載していた『がんぼ ナニワ悪道編』が終わって週刊連載の『カバチ!!! -カバチタレ!3-』だけになったから、毎週1~2日は家に帰れてますね。

田舎: 昨年までは隔週と週刊のW連載でしたもんね!昨年夏に16年続いた『がんぼシリーズ』が完結したということで、16年間、本当にお疲れ様でした!先生が週に1~2回も家に帰れてるなんて、昔僕がアシスタントしてた頃には想像できなかったです!(笑)

東風: そうそうそう。もうほんまにあの頃は地獄でした。まあ月6本やってたのが月4本になったから単純に収入は2/3になったんやけどね。それでも金銭的にはきつくなったけど身体的にはすごい楽になった。多分あのまま続けてたら僕ほんまに死んでたで!

田舎: あの頃は連日徹夜してましたもんね。ピークに忙しい時なんて、作業の合間に椅子に座ったまま「1分経ったら誰か起こしてー」って言って1分睡眠してましたよね。いつかぶっ倒れるんじゃないかってすごく心配でした。

東風: 懐かしい!やってたなぁ、それ!もう最近は徹夜すらほとんどやってない。今は気持ち的にも体力的にも楽になって、やっと人並みの生活に戻れたよ(笑)

田舎: 安心しました(笑)逆に16年も過酷な生活を続けてたって、すごいですよね!本当にお疲れ様でした。

仕事場の話

こだわりと理由

田舎: 先生の仕事場って、すごく遊び心があって、いるだけで楽しいなって思うんですけど、何かこだわりとかあるんですか?

東風: 常に自分に刺激を与えたいと思っていろんな物を置いてます。いつ何が漫画のヒントになるかわからないので。何もなくて真っ白な部屋だったら何も浮かばないから、常に何かが目に入ってくる方がいいなと思って。どんな小さなものでも、何かをヒントに、何かがきっかけで、何かすごいものが生まれてくるかもしれないからね。だから、自分の趣味じゃないものも置いてる。

 

本棚にはいろんなジャンルの漫画やフィギュアが!

 

田舎: 全然興味なかった物とかも置いてるんですか?

東風: そうです。漫画にしても、ジャンルを問わず萌え系の漫画とかボーイズラブの漫画とか、最近そういうのが流行ってるって聞くから買ってみたり。

田舎: ええ!?先生の作風とはまったく違うものですよね!

東風: 何がヒントになるか分からんからね。フィギュアとかも目に飛び込んできてイメージが湧いたりするから。もちろん自分の好きなものも置いてるけど、自分がまったく興味ないアシスタントの趣味のものとかも置いてみたり。 とにかく何か色んな所に色んな物を置いて常に何か目に留まるようにしてる。

田舎: なるほど!ただ好きなものを置いてるだけじゃなくて、全部漫画のためなんですね。

 

なつかしのファミコンソフトや映画DVDもたくさん!

 

田舎: 作画の合間にTVゲームもやられるんですか?

東風: アシスタントと将棋のソフトをやったりしてます。がっつり集中してやるわけじゃなくて、トイレ行くときにここを通るから、みんなトイレ行くとき通るたびに2~3手ずつ進めて、みんなでちょっとずつ将棋してる感じ。

田舎: めちゃくちゃ楽しい職場じゃないですか!

東風: DVDもそのとき話題になったのを流しっぱなしにしておいたり。映像見て使える演出とかもあるからね。あんまり外出しないから常にいろんなものから刺激をもらえるように。例えば、漫画を描く手が止まってて、どう描こうかって悩んでたところも、たまたまここで流してる映画の1シーンが目に飛び込んできて、そのインスピレーションでパパパッと進んだりするんだよ。

田舎: 本当にいろんなものからヒントを得てるんですね!ここにある遊び心のすべてが東風さんの作品の糧になってると言っても過言ではないですね。

東風: そういう意味ではこういう賑やかな職場で良かったなと思います。

ウラ話①空き巣に〇〇を盗まれた……!?

田舎: しかも、めちゃくちゃ物多いけど乱雑に置かれてなくて、すごく整頓されてますよね。

東風: そうなんですよ。だからね、僕、何がどこにどの向きで置いてあるかっていうのは全部記憶してて、アシスタントがちょっと動かしただけで「これ、誰か触ったやろ」ってすぐわかるんだよ。

田舎: じゃあ空き巣に入られてもすぐわかりますね(笑)

東風: そうそう。だから、前に空き巣に入られた時もね、あの……

田舎: いやいや、ちょっと待ってくださいよ!えっ……入られた事あるんですか!?

東風: うん。前にね、仕事場に来たらドアが開いてて「あれ?」と思って入ったら、トイレの電気もついてて。絶対に消してたのに。で、「おかしいなぁ」って思って台所に行ったら、僕が食べようと思ってた“どん兵衛”がなくなってて!

田舎: どん兵衛!?(笑)

東風: 鍵開いてるしトイレ電気ついてるしどん兵衛なくなってるから、誰かアシスタントが来たのかなって思って思い当たるアシスタントに電話して「事務所来てどん兵衛食べた?」って聞いても「いえ、事務所行ってないですー」って。で、おかしいなーって思いながら玄関に戻ったら、玄関に飾ってあった絵がなくなってたんですよ!帰ってきた時にはあったのに!

田舎: えっ……どういうことですか?

東風: ……で、「あれ、おかしいな」って思ってトイレを見たら……トイレの電気が消えとってん。

田舎: えっ……!

東風: だから僕が帰ってきた時にはトイレに泥棒が入ってたんやで。

田舎: うわーー!!じゃあ先生がどん兵衛に気を取られてるうちにトイレから脱出して絵だけ盗んで逃げたってことですか?(笑)

東風: うん。めっちゃ怖いでしょ?だから、たぶん泥棒は空き巣に入ったけど僕がなかなか帰ってこないと見越して、まず腹ごしらえにどん兵衛を食べて、そのあとトイレでゆっくりしてて……。そしたら僕が帰ってきたから、慌てて玄関にある絵だけ盗って逃げたんだと思う。

田舎: こわー!被害はその絵だけだったんですか?

東風: うん。あと、どん兵衛。

田舎: あはは(笑)笑い事じゃないけど、被害が少なくてよかったです(笑)

 

先生が大好きな『ONE PIECE』のフィギュアコレクション。「ドン!」の文字や吹き出しなど、こだわりが凄い!
僕が空き巣ならこのガラスケースをまるごと持って帰りたい……。

 

東風先生の漫画ライフ

東風先生が漫画家になるまで

田舎: 今度は東風先生が漫画家になるまでのお話を聞かせてほしいんですけど、いつ頃から漫画を描き始めたんですか?

東風: 幼稚園の時から絵を描くのが好きで、小学校2年くらいから漫画に興味持ち始めました。で、小学校3~4年ぐらいから『キン肉マン』などが『週刊少年ジャンプ』で流行りだして、とにかくもう好きになった漫画は全部模写してました。『キン肉マン』を完璧に模写できるようになったら、次は『北斗の拳』、次は『ドラゴンボール』みたいに、次から次に好きな漫画の模写をして。それでどんどん絵が得意になっていったかな。

田舎: 子供の頃から好きな絵を描きながら鍛えられてたんですね。

東風: 僕は授業中も勉強せずにずっと絵を描いてたから、努力して上手くなったとかじゃなくて、ただただ描くのが好きでひたすら描いてたら自然と得意になっただけなんですよ。

田舎: なるほど。必死で英語を勉強したから喋れるとかじゃなくて、海外で生まれたから勝手に英語喋れるみたいな感じなんですね。(?) ずーっと漫画家を目指してたんですか?

東風: いや、それが、高校ぐらいになるとバンドマンになりたいとかボクサーになりたいとか違う夢がいっぱい出てきて、絵は描くけど漫画からは遠ざかってましたね。 社会人になって仕事しながらもいろんな夢を追いかけてはうまくいかずって感じだったんだけど、24歳ぐらいのときに、最後に自分の中に残ったのが絵だったんです。まだ自分の絵で腕試しをしたことがなかったから、学校とかでは絵が上手いと言われてたけどそれが漫画の世界で通用するのか試してみたくなって。 そしたらちょうどその頃に『ナニワ金融道』の青木雄二先生のアシスタントになれるっていう話が来たから、これはチャンスだと思って。

田舎: ついに東風先生の漫画家としての運命が動き出すわけですね。

東風: そのことが、地元の広島の呉っていう田舎を出るきっかけにもなったし、ちゃんとプロの世界で自分の絵が通用するっていうのをそこで初めて自信が持てた。でも僕が入って半年くらいで『ナニワ金融道』が終わっちゃって。 それでそのまま広島には帰らずに大阪でアルバイトをしながら1年ぐらいかけてやっと自分の漫画を一本描いたんですよ。

田舎: その時は今みたいに原作者さんと一緒にじゃなくて、全部一人で作ったんですか?

東風: そう、全部オリジナルで。それが生まれて初めて一人で原稿にした作品なんだけど、いきなりちばてつや賞の佳作に選ばれて。

田舎: ええ!初めて作った漫画がいきなり賞とったんですか!すごい!!

東風: ずっとちばてつや先生が大好きだったんで、ちばてつや賞の佳作に選ばれて、授賞式で東京に呼ばれてちばてつや先生に会えるっていうのが、もうすごく嬉しくて!

田舎: それは嬉しいですよね!天狗になってもいい出来事ですよ。ちばてつや先生から作品に影響を受けたりもしたんですか?

東風: そうですね。僕らの世代は水島新司さんやちばてつやさんの影響を受けてる漫画家が多いから、自然と似たような絵柄になってる先生が多かったですね。僕も、今でこそ師匠が青木雄二先生だから、『ナニワ金融道』っぽい絵柄で書いてますけど、ちばてつや賞の佳作になった作品はどちらかと言えば井上雄彦さんとか高橋ヒロシさんっぽいリアルなタッチの絵柄でしたよ。

田舎: ええ!?意外ですね!じゃあ今はあえてこういう絵柄でやってらっしゃるんですか?

東風: そうなんですよ。『カバチタレ!シリーズ』も『がんぼシリーズ』も、『ナニワ金融道』の絵柄が合ってるということに気づいたので。だから、よく間違えられますね。未だに『ナニワ金融道』の作者が描いてると思ってる人の方が多いくらいです。

ドラマ化で「天狗になっちゃった」

田舎: ちなみに先生は今はおいくつでしたっけ?

東風: 今46歳です。27でデビューしたから、来年で二十周年かな。

田舎: 二十周年ですか!僕今32歳ですけど、ドラマの『カバチタレ!』を観てたのがたしか中学生くらいでした。17年前くらいですかね。

 


法を知らなきゃ泣きを見る。泣き見た人のドラマを読めば、生かせる法が頭に入る。「カバチタレ」とは広島弁で「文句や屁理屈を言う人」のこと。法律を知ってカバチをタレることができれば、人は泣き寝入りすることなく、自分たちの生活を守ることができるのだ。この物語の主人公・田村勝弘もまた勤め先の横暴社長の不当解雇にあって泣き寝入りするしかなかったが、ひょんなことから行政書士の大野と出会う。そして法は使い方次第と目覚めた田村は行政書士を目指すため大野事務所に補助者として入所する。

(C)東風孝広・田島隆・青木雄二/講談社
引用元:Comee.net

 

東風: 多分それくらいかな。あれは僕がデビューして2年目くらいだったから。

田舎: え!そんな早かったんですか!

東風: うん。まだ単行本も5巻しか出てなかったからね。

田舎: デビュー2年で漫画がドラマ化してあんなに大ヒットして、ってすごいですね!しかも、常盤貴子さん、深津絵里さん、山下智久さんなど超豪華キャスティングで。

東風: 完全に天狗になりましたね。

田舎: あはは(笑) どんな天狗っぷりだったんですか?

東風: お金入ってきた途端、フェラーリ買って、ロレックス買って、もうお金の遣い方がすごかったよ。

田舎: うわー!かなり派手な生活してたんですね。

東風: まあ生活って言っても遊ぶ時間はなかったから、でかい買い物をしてただけだけどね。

田舎: 収入はドカンと増えたけど、より忙しくなっちゃって遊ぶ暇はなかったんですね。

 

先生の趣味のモデルガンコレクション。こちらもすごくお金がかかっていそう……。

 

ウラ話②天狗になりすぎた結果……!?

東風: で、実は『カバチタレ!』のドラマが終わった後すぐ立て続けにドラマの話が来たんだけど、天狗だったもんだから、生意気に「主人公はその役者じゃ嫌です」って言っちゃったんですよ。『カバチタレ!』がヒットしたから、多少のワガママなら通るかなと思って。大手プロダクションの超有名な方だったんだけどね。そしたら、それからまったく仕事が来なくなって……(笑)

田舎: ええええ!すごいウラ話ですね!記事にして大丈夫ですか?(笑)

東風: 名前は言わないので大丈夫です(笑)初めてのドラマ化の時は、原作では主人公が男なのをドラマで女性主人公に変えられてたのに、「それでも是非お願いします」って下から言ってたのに、天狗になっちゃって次は誰々にしてくださいみたいなことを言っちゃったからね。今思えばめっちゃヤバかったな、と。

田舎: そのせいでドラマ化がなくなっちゃったんですね(笑)でもその後ちょっと期間が空きましたけど、またドラマ化されましたよね。『特上カバチ!!』が。

 


多重債務に不倫精算、etc.――みんなの知りたい「法律」が、ここにある。スカッと一発、第2章!! ついに補助者から行政書士にステップアップして、初めての依頼にはりきる田村(たむら)。だが……出会ったのは百戦錬磨のオンナ行政書士・住吉美寿々(すみよし・みすず)だった! 浮世のカバチを一刀両断、法を駆使した行政書士バトル! 《タレ》をひかえて《特上》に!!!!

(C)田島隆・東風孝広/講談社
引用元:Comee.net

 

東風: 10年空いちゃったけどね。

田舎: 天狗になったせいで10年もドラマ化が遠のいちゃってたんですね。この時は何もワガママ言わずに受けたんですか?(笑)

東風: そうですね。10年ぶりだったんで、「はい、はい、はい、何でも大丈夫です!」という感じで。

田舎: あはは(笑)そのさらに数年後、今度は『がんぼシリーズ』から『極悪がんぼ』がドラマ化されましたよね。

 

うだつがあがらない28歳・神崎守(かんざき・まもる)。中卒を理由に思ったように仕事にありつけず、ふらふらと友人の甘言に乗り、カード偽造に手を染めてしまう。その結果、友人には裏切られ、作業船に売り飛ばされ……行き着いた場所は事件屋の事務所。自らの命を担保にして、裏業界で上を目指す!『カバチタレ!』『特上カバチ!!』の最強コンビが贈る絶対バレない、法の抜け方、くぐり方!!(※マネしないでください!!!!)

(C)田島隆・東風孝広/講談社
引用元:Comee.net

 

東風: そう、4年後に。しかも、月9で!それでまた舞い上がっちゃって。

田舎: だって月9ですもんね!

東風: でも今度は前の一件があるから、あんまり天狗にならないように気をつけたんだけど、それでも舞い上がっちゃってね。前ほどではないけど、結構派手にお金使っちゃいました。

田舎: 『極悪がんぼ』でもまた原作では男主人公なのが、ドラマでは女性主人公に変わってましたよね。

東風: そうそう。でも「全然いいです、いいです!」っていう感じで。せっかくの月9が、変なこと言ってまた話流れちゃったら嫌だからね。

田舎: そうですよね(笑)

原作者田島先生との絆

田舎: 東風先生の漫画の原作者の田島隆先生は東風さんの従兄弟なんですよね?従兄弟が相方ってどんな感じなんですか?

東風: そうですね。田島さんは僕の四つ上の従兄弟で、ちっちゃい時ずっと一緒に遊んでたので、ちょっとしたニュアンスも読み取れるという強みはありますね。例えば、原作に正確な場所じゃなくて「どこどこのあのちっちゃい時よく遊んでたドブ川みたいな感じで~」って適当に書いてる時がたまにあって。それでも僕は分かるんですよね。なんとなくのニュアンスでも汲み取って情景が浮かぶんですよ。

田舎: 二人の絆がないとできないことですよね!原作者の田島隆先生は『ナニワ金融道』の原作も書いてらっしゃいましたよね。それって、すごい巡り合わせだなと思うんです。そこでアシスタントしてた東風先生と原作者の田島さんが従兄弟で、今はその二人が一緒に漫画を作ってるっていう。何か運命的なものを感じますね。

東風: ドラマみたいですね。実は、田島さんも子供の頃は漫画家を目指してたみたいで。でも従兄弟で年下の僕の方が絵が上手かったから、自分は絵を描くのを諦めたらしいんですよ。で、僕が小学校四年の時に初めて描いた漫画に田島さんがアドバイスくれたんです。僕が背景のない漫画を描いてたら、「ここにこうやって背景を描くだけで世界が広がるよ」って教えてくれた。今思えば、それが二人の初めての合作だった。

 

田島隆先生との初めての合作。何もなかった背景に、田島先生が月と宇宙ステーションを。

 

東風: これがそのページですね。僕は宇宙だからって背景に何も描いてなかったけど、田島さんが「月とか宇宙ステーションを描くだけで良くなるよ」って描いてくれた。


田舎:
 うわーこれはお宝ですね!!もう40年近く前の漫画を今でも大事に持ってらっしゃるんですね。感慨深いものがありますね。

 

こちらがその超貴重な初漫画の表紙。ちゃんと端を止めて製本してます。

今後の展望

田舎: 漫画家として、今後の展望とかありますか?

東風: もちろん面白い漫画を書かないと始まらない話やけど、正直、漫画の売り方を出版社に任せてるだけではダメな時代が来たなと思ってます。漫画をただ描いてるだけじゃなくて、漫画家自身も経営者としてどう自分の漫画を広めていくかを考えないと、取り残されていく時代。出版社とか編集部に任せっきりだと駄目だなと思いますね。

田舎: うーん、なるほど!具体的に今後こうしていかないと、って考えていることはありますか?

東風: ネットとかSNSを上手く使ってやっていかないと、と思っています。あと日本だけじゃなくて世界にも発信していかないとね。

田舎: そうですよね!僕がやってるComeeという事業も、海外にも広まればいいなと思ってて。今はほぼ日本人のユーザーさんしかいないんですけど。日本の漫画って海外で流行ったりするじゃないですか、その時に海外の人が「いっぱい漫画あるけど、どの漫画を読めばいいんだろう」って困った時にComeeを使えば「日本の人はこういう漫画を読んでるんだ、じゃあこれを読んでみよう」って思えるようなサイトになればいいなと思ってるんです。まずは日本でもっと広めないといけないんですけど。

東風: すごいことだね。もう今の時代は、そういうことができないとだめかなと思ってて。 だって、やっぱり今はまだ漫画の文化が海外に普及してると言っても、結局は日本だけのものになってるから。例えば、僕らが小さい頃に初めてジャンプを読んだ時に受けた衝撃みたいなものをまだ知らない人が世界にはいっぱいいるわけじゃないですか。だから、そこを狙って、その国で新しい文化として流行るような漫画を描ければいいなと思いますね。単純に中国とかアメリカみたいに人口がすごく多い国だと、日本より圧倒的に広く流行る可能性もあるから、夢があるなと思う。これからは日本人向けのためだけの漫画じゃなくて、海外も意識して世界の人に向けて漫画を描いていければなと。

田舎: 世界を視野に入れてるんですね!たしかに漫画って海外ではあんまり独自の文化としては確立されてないですもんね。アメコミとかはありますけど。

東風: そうなんですよ。今って、日本で日本人向けに発売されたものが海外でたまたま人気出てるって言うだけで、元々その漫画は世界に向けて描かれたものじゃないってことがほとんどだからね。だから、次の自分の新作とかも、最初から世界に向けて描いてみるのもひとつの手かなと思ってて。例えばセリフがない絵だけの漫画とかなら見て楽しめるかな、とか。

田舎: いろんなことを考えてらっしゃるんですね。僕も漫画業界に少しは携わっている人間として考えさせられるお話です。

東風: だから今後はComeeさん のようなサービスが必要になってくる時代が来ると思いますよ。漫画家にとっては本当に必要だと思う。特に地方で活動している漫画家にとってはね。

田舎: そう言っていただけるとありがたいです。僕たちに手伝えることがあれば何でもしますよ!一緒に東風先生の漫画をもっと世に広めましょう!Comeeにしかできないこともあると思います。今日はいろいろなお話をしてくださって、本当にありがとうございました!

おまけ:ウラ話③究極に追い込まれたときの「奥の手」

東風: あとね……これはあんまりどこでも話したことないんやけど……締め切り前で本当に時間がない追い込みの時に、出張マッサージを呼んで1~2時間だけ手伝ってもらったことがあるんですよ。

田舎: 何ですかその話!(笑)詳しく聞かせてください!!

東風: 深夜とか早朝に、本当に猫の手も借りたいくらい、その辺の誰でもいいから声かけて手伝ってほしいくらいピンチの時に、出張マッサージのお店に電話して……女の子が来たらちゃんと1時間16000円とか料金を払って、そういうサービスじゃなくてベタ塗りとか消しゴムかけとかを手伝ってもらってたんです。

田舎: こんな話書いちゃっていいんですか!?(笑)

東風: いいよ!だって悪いことは何もしてないからね!(笑) 女の子が部屋に来たら「そういうプレイとかサービスはいいから、これ消しゴムかけたり、もしちょっとでも絵心あるんだったらここのベタを塗ってください」って。そしたら女の子も「えっ!?本当にこれだけでいいんですか!?」ってびっくりしてたよ。 でも本当に締め切りまで1時間ぐらいしかないから、「一分一秒の争いだからそれだけしてくれれば助かる」って言ってやってもらってました。

田舎: すごい話ですね!(笑)

東風: それで本当にちゃんとギリギリ締め切りに間に合ってるからね(笑)確実に人手を確保する方法を見つけました。

田舎: 画期的なアイデアですね!多分他にやってる人がいない、完全に東風先生オリジナルの技だと思いますけど。それって女の子側はどういう気持ちなんですかね?(笑)

東風: もうただただ戸惑ってたよ。「本当にこれだけで帰っていいんですか!?」って何度も聞かれて。「いやぁ助かりました、締め切りに間に合いましたよー」みたいな。

田舎: 絶対その娘たちいろんなとこでエピソードトークにしてますよね!「この前すごい変なお客さんいたんだけど~」みたいな。

東風: どの娘も何の漫画を手伝ったか分からないまま帰ったと思いますけどね。

田舎: それって、何回か呼んだことあるんですか?

東風: 3回くらいかな。

田舎: 3人も出張アシスタントが!(笑)ここに呼んでたんですよね?入ってきて最初びっくりするんじゃないですか?男10人ぐらいいるし、何されるんだろうってめっちゃ怖いですよね絶対。

東風: そしたら逆に何もしなくてよかったっていう……(笑)こっちもそれくらい追い詰められてたからね。どうしても人手が足りなくなったら、もう正直その手しか残ってないでしょ。それで何度もピンチを乗り越えてきた。

田舎: 最後に衝撃エピソードをありがとうございます!(笑)

まとめ

僕が東風先生と知り合って4年以上が経ちますが、ここまで深くお話を聞かせていただいたのは初めてだったので、とても楽しい取材になりました。

真面目なお話から、他ではあまり語られることがないようなウラ話まで、いろいろなお話をお聞きすることができました!

記事の前半にも書きましたが、東風先生の仕事場には先生やアシスタントさんの趣味のものや先生のイラストなどがたくさん飾られています。

その中でも僕が一番好きなのが、こちらの絵です。

 

 

この大きな絵は、東風先生がアシスタントさんのために描き下ろしたものです。

大きく描かれた「じゃあ聞くが、オマエら何のために生きてんだ。」という文言には、こんなエピソードがあります。

プロの漫画家を志して東風先生の元で修行をしてらっしゃるアシスタントさんたちが、ある時、東風先生の漫画のお手伝いが忙しくて手一杯になってしまい、その忙しさと達成感に満足してしまい、なかなか自分の漫画を描かなくなってしまったそうです。

そんなときに先生がアシスタントさんたちに向けたメッセージが、この大きな一枚の絵なのです。

「じゃあ聞くが、オマエら何のために生きてんだ。」

この文言には、「君たちは僕のアシスタントをするためだけに生きているんじゃないでしょう。何のためにここでアシスタントをしているんですか?君たちが本当にしたいことは何ですか?」という先生からの厳しくも温かい激励のメッセージが込められているのです。

すごくかっこいい先生だなと僕は感動しました。

かと思えば、出張マッサージの女の子に漫画を手伝わせたり、ドラマ化で浮かれて天狗になって失敗してしまったり、と破天荒な一面もある、とても魅力的な漫画家さんです!

僕は初めて出会ったときからずっとお世話になってて東風先生のことが大好きなのですが、今回の取材を通して、さらに東風先生の大ファンになりました。

東風先生の描く漫画を、先生が漫画家としてこれから歩む道を、一生追いかけ続けたい、と本気でそう思いました。

最後に、Comee宛にサイン色紙までいただきました!

 

 

さらに取材後は、僕と東風さんが出会った、僕が芸人時代にアルバイトをしていた焼き鳥屋さんに連れて行っていただき、美味しい料理とお酒をご馳走になりました。

そこでも、アツい話や記事にはできないようなウラ話など(笑)いろいろなお話を聞かせてくれました。

東風先生、これからも僕の大阪のアニキでいてください!

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