リアルすぎて辛い……それでも読んで欲しい学校崩壊漫画『さよなら、ハイスクール』をご紹介。

リアルすぎて辛い……それでも読んで欲しい学校崩壊漫画『さよなら、ハイスクール』をご紹介。
     

大学卒業以降職を転々としたが、幼い頃から三度のメシより本が好きなことを思い出し、自分には物書きしかないと一念発起。
現在はフリーライターとしてひた走る。
漫画は少女漫画を中心にオールジャンル読むが、闇が深いものとミステリー要素があるものが考察しがいがあって好き。

   

学生時代、誰もが見て見ぬふりをしているけれど、確かに存在するスクールカースト。
学校生活での独特の空気感や、高校生ならではの漠然とした思いをそのままに描いたのが森もり子先生の『さよなら、ハイスクール』という漫画です。

森先生は先日Comee mag.でもインタビューをさせていただき、様々な作品についてお話いただきました。

 

 

そんな先生が「自分が描いた漫画の中で一番面白いと思っている」とお話されていた作品。

読むのが辛くなる方もいるかもしれません。
それほどまでにリアルな学校生活を描き切った影響力のある作品です。

カーストに疑問をもったり悩みを抱いてきた方にこそ読んでほしいです。

あらすじ

スクールカースト最底辺の高校生、朝倉は文化祭実行委員に任命されたことをきっかけにクラスの雰囲気と秩序の崩壊を目論み、カースト上位の美少女・伊藤マユミと付き合う計画を立てる。順調に思われたカースト崩壊計画だが、ある事件をきっかけに意外な方向へ…!? 奇想天外な学級崩壊悲喜劇、開幕!「返事をくれない彼氏を追い込んでます。」LINEスタンプで超注目のWEB作家が描く初のストーリー作品!

(C)森もり子
引用元:Comee.net

舞台は文化祭を控えた私立清桜高等学校。
2年B組の文化祭実行委員に選ばれたのは、クラスでも目立つ存在の男子に推薦されて断りきれなかった主人公の朝倉と、誰もやりたがらない様子を見かねて立候補した伊藤マユミでした。

スクールカースト下位の朝倉は、常々クラスの雰囲気に心の中で不満を抱いていました。
しかし、学校の中でも特に可愛いことで評判で、スクールカースト上位のマユミと話すきっかけができたことを機に、クラスのヒエラルキーをぶっ壊すことを決意します。

 

 

その方法は朝倉がマユミと付き合うという無謀なものでしたが、勝算も恋心もなく、勢いだけで告白した朝倉の告白をマユミは予想外にも受け入れ、2人は付き合うこととなります。

今まで関わりのなかった2人が付き合ったことはすぐに広まり、他のクラスからも噂されるようになります。
それをきっかけにクラスの空気や人間関係も少しずつ変化し、朝倉が望んだようにクラス内の秩序にも混乱が生じてきます。

しかし、朝倉が予想もしなかったマユミの思考も相まって、スクールカーストをぶっ壊す革命は次第にエスカレートしていくのでした……。

2年B組のスクールカーストとは?

高校2年生の朝倉は、スクールカーストを常に気にしています。

朝倉の考えるスクールカーストでは、クラスの中心的存在で、影響力もあり、青春を謳歌している、いわゆる「イケてる奴ら」が上位グループに位置します。
さらに、上位グループの顔色を伺い、賛同しながら、普通の学生生活を送ろうとする「普通の生徒たち」が中位のグループ、そして朝倉の属する「イケてない」下位グループに分けられます。

 

下位グループの生徒は軽視されており、発言を笑われたり、時には無視されたりすることもあります。
下位グループに求められるのは、目立たないこと。
上位グループに楯突かないのはもちろんのこと、不用意な発言をして目をつけられないことが重要です。

そのため、その場のノリで文化祭実行委員に推薦されても、朝倉は上位グループと同じようになんとなく嫌だからという理由では断ることはできないのです。

 

なぜだれもスクールカーストを壊そうとしないのか?

上位グループの生徒は、作中で「うちのクラスにスクールカーストってあるの?」と言っていますが、これも作中で描かれるスクールカーストの空気感をリアルなものにする要素の1つとなっています。

 

上位者がスクールカーストを認める発言をすることは、下位のものの上に立っていることを自ら認め、傲慢な人間となることを意味しています。
また、下位者からしてみても、スクールカーストの存在を認める発言をすることは、自らが虐げられる地位にいることを認めることとなります。
それ故に誰もがスクールカーストの存在を感じながらも、本気でその存在について言及するものや、どうにかしようと表明するものはいません。

しかし、クラス内の階級は、教室内にある“見えない空気”や秩序として確かに存在しています。

例えば、朝倉とマユミが付き合った際に他クラスの生徒まで動揺するほど噂が出回ったこと。
また、朝倉と付き合った際、マユミが他の生徒たちから親近感がもてると評価されたのに対し、朝倉は自然と「マユミに付き合ってもらった男子」と判断されたこともスクールカーストの存在があるからに他なりません。

この作品では、クラスという小さな世界の中では、影響力のあるカーストの上位者ですらヒエラルキーの圧力に悩まされていることが描かれています。
上位者としての振る舞いを求められ、下位者と本気で馴れ合うことは許されず、ややもすれば一瞬で下位に突き落とされることもある恐ろしさを含んでいます。
決して表立ってその恐ろしさを口にする者はいませんが、存在を無視することができないという矛盾がスクールカーストのもつ気持ち悪さの正体ではないでしょうか。

『さよなら、ハイスクール』は少年たちの成長を描いた物語

クラスの中でも下位のグループに存在し、誰よりもスクールカーストの存在を意識せざるを得なかった朝倉は、上位者への憎悪とコンプレックスを溜め込んでいます。

しかし、彼が“空気”をぶっ壊すためにとった行動は、自らの劣等感やフラストレーションから解放されるためにただやみくもにクラスの上位者を攻撃しているにすぎません。
結局自分がどうなりたいのか、具体的に何をすればいいのかは見えておらず、行動力のみで突っ走ってしまいます。

 

 

朝倉は、カースト上位者を悪と決めつけることで自分を革命者に仕立て上げています。
そのため、カースト上位者の言葉に耳を傾けることはできず、伊藤と付き合ってカースト上位者の輪の中に入れたとしても、彼らとの差ばかりが気になってしまい、結局朝倉の感じているスクールカーストゆえの隔たりが解消されることはありませんでした。

まさにルサンチマン(弱者が強者に対して憤りや非難の感情を持つこと)を体現する存在として描かれています。

 

 

しかし、カースト上位者といえども、彼らもまたただの高校生であり、周りから期待された役割を脱して自由に生きているわけではありません。
自分のことでいっぱいいっぱいでそれに気づいていない彼らは高校生らしいリアルな若者です。

彼らがどのようにスクールカーストと決別し、新たな人生を歩むようになるのか……最後まで目の離せない作品です。

まとめ

『さよなら、ハイスクール』は、学校が全てだった学生時代を舞台に、スクールカーストをぶっ壊そうと戦った少年と少女の物語です。

スクールカーストは、“いじめ”とまではいかないけれどクラス内のそれぞれの立ち位置を表す階層であり、表立って存在を認める人は少ないけれども確かに存在するなんとも言えない“空気”のこと。

クラスでの立ち位置がそのまま生徒一人一人の価値を示しているわけではありません。

『さよなら、ハイスクール』でも受験もまだまだこれからの高校2年生が舞台です。
人目を気にする余裕があり影響力のある生徒たちが持てはやされましたが、3年生に進級し、受験の存在を実感するようになると、他人よりも自分の将来を見据え始めるため、スクールカーストも自然となくなっていきます。

スクールカーストとは、言ってしまえばそれだけのものでしかありません。
その複雑さをそのままに、リアルに描いた作品なので、序盤のストーリーは、人によっては読んでいて辛くなったり、昔を思い出して恥ずかしくなったり、あの時ああしていれば……という思いに浸ることになるかもしれません。

しかし、それだけの影響力があり、最後には読んでよかったと思える作品です。

 

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