『聲の形』が描き出した障害との向き合い方とは?

『聲の形』が描き出した障害との向き合い方とは?
     

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今年の夏も夏い日が続きましたが、この時期になるとテレビでは24時間テレビの話題も多かったですね。
その24時間テレビが放送されているのと同時刻に、NHK教育ではアニメ映画版の『聲の形』が放送され、ネットを中心に話題を呼びました。

社会が向き合わなければいけない重要な課題である「障害」を1つのテーマにした作品を、同じく障害を抱える方と向き合い寄付を募る24時間テレビにぶつけてきたことがその理由です。

今回は『聲の形』という作品が、障害と向き合う社会を考える上で、どれほど意義がある作品なのか紹介していきます。

『聲の形』の紹介とあらすじ

 

「俺は彼女が嫌いだった」――明るく! 楽しく! 大冒険! がモットーの少年、石田将也(いしだ・しょうや)。耳の聞こえない転校生の少女、西宮硝子(にしみや・しょうこ)。2人の出会いが、教室を、学校を、そして将也の人生を変えていく――。余りにもみずみずしい青春のカケラたち。最高に切なく、心ゆさぶる物語が生まれました。

(C)Yoshitoki Oima/講談社
引用元:Comee.net

 

本作は石田将也(いしだしょうや)が在籍する小学校に、耳があまり聞こえない障害を抱える西宮硝子(にしみやしょうこ)が転入してくるところから物語が始まります。
最初は耳が聞こえないということもあり、クラスメイトたちも配慮をしながら接していきます。

しかし徐々にその“違い”に対する配慮が欠けていき、初めはからかいのつもりだったコミュニケーションがいじめに発展してしまいます。
そしてそのいじめがきっかけで硝子は転校し、いじめの中心人物であった将也は障害を抱える女子をいじめた男子として、一人責任を負わされて他の生徒からのいじめの対象となってしまいます。

その後、高校生へと成長した将也は、硝子と再会します。
その際に、いじめに対する贖罪を兼ねて、小学校時代の友人たちと再び交流していきます。
過酷ないじめの描写などが目に付きやすいですが、コミュニケーションを題材とした作品です。

重いテーマは独特の手法で描き切る

本作で特徴的なのは、将也がいじめという過去のトラウマにより人の顔を直視することに強いトラウマがあるという点です。
これを作中では人の顔に大きな×印を書くことで表現しています。
その印が落ちることでそのトラウマの克服や、または再び×印が顔につくことで、その人物の表情を見られなくなるということを表現します。

顔を見ることができない、正面から向かい合うことができない、ということを漫画で表現するのは難しいです。
顔をのっぺらぼうにすると、読者にもこの人物が誰だかわからなくなってしまうこともあります。
本作は視覚的なわかりやすさもかね備えながらも、オリジナリティのある演出で物語をより魅力的に盛り上げます。

編集部も躊躇したほどの勇気のあるテーマ

本作は作者の大今良時さんが、週刊少年マガジンの第80回新人漫画賞に応募し、入選を果たしています。
しかし当時の編集部は掲載を見送りました。

この当時の事情については映画『聲の形』が公開された際に放送された、「映画『聲の形』公開記念特番」で、週刊少年マガジン編集部の小宮山祐紀が明かしています。
「ともすると前向きではない作品、読者に希望を与えにくい作品」という理由で掲載を見送りました。
同じインタビュー内で、その当時を振り返り「当時の編集部の読み方は浅かった」とも回想しています。

多くの漫画を扱い、時には社会を賑わせるようなセンセーショナルな表現でも必要とあれば掲載するようなプロの編集者がためらうほどに、重いテーマを抱える作品です。
特に小中高生を対象とした少年誌で本作が連載されたことは、とても大きな意義があったと考えます。

劇場アニメはどのように『聲の形』を描いたのか?

本作は2016年に気鋭の若手アニメ監督、山田尚子によって映画化されています。
2016年は話題作の映画が非常に多かった年ですが、私は本作を年間トップクラスの評価をされるべき作品だと考えています。

原作は全7巻と約2時間の映画にまとめるには少し長く、原作にはあった将也たちが映画を撮影するエピソードは全てカットされています。
原作では映画を撮影することにより文化祭で大きな物語の転換があるのですが、それが全てなくなっています。
もともと社会的に議論されてしまうようなテーマであることに加えて、原作からの大きな改変により、映画の評価は賛否が分かれる結果となりました。

しかし、作品の核となるテーマをしっかりと捉えつつ、それを2時間以内に抑える手法としてこの選択はとても大胆であり、効果的なものだったと思います。

まとめ

いかがでしたか?

本作は過酷ないじめ描写や、また加害者である将也に対して被害者である硝子が恋愛感情を抱いているように見える描写もあり、加害者と被害者のあるべき姿なども議論をよんでいます。
残念ながら日本で障害やいじめをテーマにし、それに真正面から向き合った作品はあまり見受けられません。
議論が巻き起こるほど社会的に重要なテーマを持つ作品が、話題になること自体が珍しいことと言えます。

難しい社会問題への第一歩として、ぜひともみなさんに手にとってほしい作品です。

今回紹介した作品を読めるサイトはComeeで確認できます。
作品を読んだ人の評価やレビューも見ることができるので参考になりますよ。
記事下のバナーからComeeに飛べますのでチェックして見てくださいね。

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