田舎はるみの「漫画家さんインタビュー企画」、ついに第10弾です!
先日、知人の紹介で漫画家の青木U平先生とお酒の席でご一緒させていただきました。
『フリンジマン』の連載を最初から最後まで『週刊ヤングマガジン』で毎週楽しみに読ませていただいていた僕にとって、嬉しすぎる出会いでした。
青木先生にお会いする前、僕は勝手な想像で、『フリンジマン』の愛人教授(ラマン・プロフェッサー)のような、クールで何を考えているかわからない不思議な恐ろしさを醸し出す人物が現れるんじゃないかと想像していました。
ですが、実際にお会いした青木先生はものすごく物腰が柔らかくて漫画愛の強い優しいお方でした!
飲みながら漫画の話などで盛り上がり、「是非今度青木先生にインタビューさせていただきたい」という僕の突然の申し出にもご快諾いただきました!
ということで今回は、ドラマ化された『フリンジマン』や現在連載中の『酩酊!怪獣酒場2nd』などの制作秘話や、今月から始まる新作についてインタビューさせていただきました。
そしてなんと、この記事のために特別に新作の下絵も見せてくださいました!
激レアですので要チェックです!
【プロフィール画像】
青木U平
2013~2014年、『週刊ヤングマガジン』にて『フリンジマン』が連載され、2017年にテレビドラマ化される。
現在は『ぐるなび』にて『酩酊!怪獣酒場2nd』を隔週連載中。
10月26日から『くらげバンチ』にて新連載『マンガに、編集って必要ですか?』を開始予定。
多ジャンルに渡る作品たち
自身のキャリア最長連載となった『酩酊!怪獣酒場』
田舎: 青木先生、よろしくお願いします! まずは青木先生の作品についていろいろお聞きしたいのですが、現在『ぐるなび』内で連載されている『酩酊!怪獣酒場』シリーズが誕生したきっかけを教えていただきたいです!
店員もお客もウルトラ怪獣だらけの「怪獣酒場」にバイトとして入店した、うるま寅次郎。そろそろ仕事にも慣れたころ、次に与えられたミッションは“新人教育”。
だけど、そいつは禍々しいオーラを放つ、明らかに“ヤバい”大型新人だった──。
怪獣酒場初心者も大歓迎、超待望の新シーズンが開幕!
(C)円谷プロ (C)青木U平 /ヒーローズ
引用元:Comee.net
青木: 当時のヒーローズの担当さんが企画してくれました。「怪獣たちの人間臭い日常を『フリンジマン』の作家に描かせたらどうなるだろう」と。おかげさまで自身のキャリア最長連載になりました。担当氏には大変感謝しております。
田舎: 今は『酩酊!怪獣酒場2nd』が既刊3巻で、シリーズ累計7冊目ですよね! 僕子供の頃『ウルトラマン』が大好きだったので、いろんな怪獣が出てくるのが懐かしくて楽しいです。先生の中で特にお気に入りのキャラクターや描いていて楽しいキャラクターはいますか?
青木: 全てのキャラクターがお気に入りですね。みんなかわいそうな部分があるので、なんとか幸せになってもらいたい。描いていて楽しいのは怪獣たちです。
田舎: たしかにみんなかわいそうな部分があるのは共感です!(笑)それでは、主人公・うるま寅次郎のモデルになった人や、生み出したときのイメージなどはありますか?
青木: モデルは特にいないのですが、なるべく普通の人間にしようと思いました。世の中がとんでもない状況になっているのにあんまり危機感を抱いていない普通の人……みたいなイメージですね。
田舎: たしかに危機感はまったく抱いていないですね(笑)怪獣酒場のたくさんのエピソードの中で、先生自身が特にお気に入りのエピソードはありますか?
青木: たくさんあるのですが、強いて言うならゴモラの登場回です。あの話で「『酩酊!怪獣酒場』でやりたいことはだいたい表現できたのでは……?」とすら思っています。
(『酩酊!怪獣酒場』第9回)
田舎: そうなんですね! 僕もゴモラの回は、哀愁があってすごく好きです。ちなみに僕は第7回の料理対決の話が大好きで、何度読んでも声を出して笑ってしまいます。(『酩酊!怪獣酒場』第7回)
青木: 料理対決を気に入っていただき光栄です! 勢いで考えたお話なのでとてもうれしいです。
田舎: 勢いで!?(笑)『酩酊!怪獣酒場』を描く上で苦労した点などはありますか?
青木: いろんな漫画や実在の人物とコラボする回は例外なく苦労しました。そもそもウルトラ怪獣が借り物なのに、さらにそれを別の方のキャラクターとコラボさせるというお題は……。いや、ありがたいことなんですけどね!
田舎: なるほど……読み手である僕からすればすごく豪華な回になるので単純に楽しく読んでいたのですが、たしかに言われてみると描き手の先生にとっては大変そうな回ですね!
『フリンジマン』の個性的な4人のキャラクターは全員先生自身の分身!?
場末の雀荘に集まった4人の男たち。彼らはある共通の願望で繋がっていた。その願望とは「愛人を作りたい!!」という清々しいまでに不純で、申し開きできないくらいにストレートなものである。そして男たちは『愛人同盟』を結成する!! 不倫のベテランである井伏(通称:愛人教授)から、愛人作りのノウハウを伝授される田斉たち。果たして、彼らは愛人を獲得することができるのか……ッ!?
(C)青木U平/講談社
引用元:Comee.net
田舎: 他の作品の話になりますが、『フリンジマン』のメインキャラの4人と、『服なんて、どうでもいいと思ってた』のメインキャラ4人の、人物像や立ち位置・キャラ付けがけっこう似ているかなと思うのですが、何か理由があるのですか?
青木: 『フリンジマン』を描いていて本当に楽しかったので、『服なんて~』でもやっちゃいました。
オシャレ、なにそれコワイ…! 流行やオシャレに無縁の男たちが、女性ファッション誌の編集部へと異動となり、日々オシャレな誌面づくりやオシャレな女性文化に翻弄されるギャグマンガ!
(C)青木U平/KADOKAWA
引用元:Comee.net
田舎: たしかに、あの4人を動かすのは楽しそうですね!(笑)ちなみに4人のモデルはいますか?
青木: 全員、自分の分身です。また描きたい……。
田舎: 全員が分身ですか! 先生のどういう部分からそれぞれのキャラが生まれたと思いますか?
青木: ザックリ言うと田斎は臆病、満島は馬鹿、安吾は恥、教授は仕事ができないところが自分と似ているところでしょうか。
田舎: なるほど!(笑)ちなみにまた描きたいと仰ってましたけど、次にまたあの4人を描くとしたらどんな話にしたいですか?
青木: いろいろ考えてみたのですが、やっぱり“アイツら”にはまた不倫にチャレンジしてもらいたいです。
田舎: 『フリンジマン2』楽しみにしています!(笑)
映画をたくさん観ていてよかった
田舎: 青木先生は多彩なジャンルの漫画を手がけていますが、作品を生み出すときに特に意識するこだわりやテーマなどはありますか?
青木: キャラクターにかわいげがあった方がいいな、と思っています。
田舎: 『フリンジマン』では“不倫”、『服なんて~』では“女性ファッション”をメインテーマに扱っていますが、それらのことは知識ゼロの状態から一から調べて描かれたんですか?
青木: お察しのとおり、両ジャンルとも全く知識も経験もなく、未だにサッパリわかりません。大変でした。
田舎: どちらも難しそうなテーマですもんね! 『フリンジマン』や『服なんて~』では、読者がすごく納得させられてしまうような論理展開をされていますが、例えば、人に物を教えていた経験などがあるのでしょうか?
青木: 人と接するのが苦手でこの仕事を選んだところもあるので、ものを教えたことなどはありません。漫画の中の論理はエンタメのためのものです。100%自分の思いではないと言えばウソになりますが……。当時、心理学の先生も褒めてくださったこともあって、読者様が納得してくださるのは作家冥利につきます。
田舎: それから、『フリンジマン』などでは映画の例えが良く出てきますよね。漫画を描く上で映画好きで良かったなと思う点はありますか?
青木: 映画の例えを漫画に出している頃はダイレクトに役に立っていました。それと、デビュー前、映画を観始めてからわかりやすくアイディアの引き出しが増えて、ネームも通りやすくなったような気がします。なので新人さんには映画観賞をお勧めしています。
漫画と青木U平先生
はじまりは『コミックボンボン』の投稿ページ
田舎: 漫画家になりたいと思ったのはいつ頃ですか?きっかけなどあったりするのでしょうか?
青木: 小学校3年生くらいです。小学校6年生くらいの時に『コミックボンボン』という雑誌にショートの漫画や似顔絵をよく載せてもらえたので、「これはイケるのでは……?」と思って目指しました。それからデビューまで25年くらいかかりましたが。
田舎: 25年とは……! 長い戦いでしたね! 普段から漫画は読まれるんですか?
青木: 勉強のために、なるべくいろんな漫画を読むよう心がけています。
青木先生の大好きな漫画5選!
田舎: なるほど、やはり普段から他の漫画を読むことは勉強になるんですね! 人生で特別に大好きな漫画や影響を受けた漫画をぜひ教えてください!
(それぞれの作品に対するコメントを原文で記載。)
青木: 影響受けすぎてボクシングを始めました。こんな素晴らしい作品があることに中学生のころ、生きる希望を見出しました。
「ひじを左わき下から離さない心構えで……やや内角をねらい、えぐりこむようにして打つべし!」――漫画史にその名を刻んだ、永遠の名作! 東京・浅草のドヤ街に、ふらりと現れた一人の少年。矢吹丈(やぶき・じょう)と名乗るその少年に一方的に叩きのめされたアル中の元ボクサー・丹下段平は、その動きに天性のボクシングセンスを見出し、一流のボクサーに仕立てあげんと奮闘するが……。
(C)高森朝雄・ちばてつや/講談社
引用元:Comee.net
青木: 漫画でこんなに表現できるんだ、と、驚愕しました。
火の山にすむという不死鳥–火の鳥!! その生き血を飲んだ者は、永遠の命を得られるという……!! 不死身の鳥をめぐって壮大な宇宙ロマンが展開する手塚漫画の代表傑作!!大波乱続出の黎明編第1弾、堂々大登場!!
(C)Tezuka Productions
引用元:Comee.net
青木: キャラクターが「生きてる」感じがして、とても魅力的でした。
弱虫な竜馬は、近所でもいじめっ子の的で、姉の乙女に助けられる毎日。そんな竜馬も7つになり学問は楠山塾、剣道は日根野道場にはいるが、塾でも道場でも落ちこぼれ。とうとう塾を退塾となる。しかし母、幸は病の床でも竜馬を優しく見守ってくれる。そんな幸と花見に出かけた竜馬を見つけたいじめっ子達だが、幸の親切心に心を打たれた彼らは、幸のために捨てられた傘で日傘を作ってくれた。そこに通りかかった上士。土佐では禁止されている郷土の日傘を目撃された竜馬達は…。激動の幕末に一陣の風を送りこみ、炎のように生きた男・坂本竜馬。その英雄の若かりし時代を描く、幕末風雲大作!!
(C)小山ゆう・武田鉄矢/小学館
引用元:Comee.net]
青木: 今でも友人の作家さんとセリフを言い合えるほど心に残る作品です。
鬱屈(うっくつ)した日々を送っていた高校生・市ノ瀬利彦(いちのせ・としひこ)は、絵画を通し、学校のマドンナ・仲村真理(なかむら・まり)と親しくなる。彼女主演の映画を作り、文化祭で上映するべく、級友達と活動を始める利彦。真理という明るい太陽に照らされて、利彦の青春はようやく煌(きらめ)き出す…はずだった。’90年代、日本中の青少年の脳髄を揺さぶった、青春漫画の金字塔!!
(C)安達哲/講談社
引用元:Comee.net
青木: 「できる、できるのだ」というセリフに象徴される力強いキャラクターに、限界を超えようとするエネルギーをいただきました。
江戸時代初頭、天下の法に反して駿河城内で挙行された真剣御前試合で対峙したのは、片腕の若武者と盲目の天才剣士だった!! 残酷無惨時代劇!!
(C)南條範夫/山口貴由(チャンピオンRED・秋田書店)
引用元:Comee.net
今秋から『マンガに、編集って必要ですか?』が新連載!
田舎: 先生は今後はどんな漫画を描きたいですか?
青木: 実は10月26日から、くらげバンチさんにて『マンガに、編集って必要ですか?』という漫画を始めます。漫画家と編集者の物語です。
田舎: 新作おめでとうございます! 漫画家さんと編集者さんの物語、すごく興味深いです! 昨今、海賊版や違法サイトの影響で漫画業界が少し荒れてしまったという印象があるのですが、今後の漫画業界について何か思うことはありますか?
青木: 新作『マンガに、編集って必要ですか?』ではご質問のテーマを含めて最近の漫画業界について描けたら、と考えております。今の漫画家は、漫画を描く以外の能力を多く求められていると感じます。作家が自ら作品の権利を守ったり、SNSで漫画を拡散したり……。もちろんメリットもたくさんあると思うのですが、業界全体を考えると、そういった自己プロデューススキルのない作家は埋もれてしまったり、純粋に才能ある作家の芽を摘んでしまったりするのではないかな……なんてぼんやり考えております。
田舎: なるほど!貴重なご意見ありがとうございます! それでは最後に、読者様に向けて一言お願いします!
青木: さっきの質問でややこしいことを言ってしまいましたが、『マンガに、編集って必要ですか?』は、「業界全体の未来を考える」などという堅苦しいものではなく、“気軽に読める漫画家と編集の打ち合わせ会話劇コメディー”であり、“私クラスの漫画家から見た漫画業界漫画”といった内容です。今までの私の漫画とは少し違う、リアルな漫画家の日常をお楽しみいただけたら、と思っております。くらげバンチにて、是非!
田舎: 青木先生、ありがとうございました!!
まとめ
青木先生の漫画は会話を中心としたコメディ漫画が多く、読んでいて思わず顔がニヤけてしまうようなものばかりです。
本当に一度ハマると抜け出せなくなる中毒性があります。
10月26日から始まる『マンガに、編集って必要ですか?』も楽しみですね!
『酩酊!怪獣酒場』は『ぐるなび』にて全話無料公開中ですので、是非読んでほしいです。
インタビュー内にも出てきた、青木先生のお気に入りのゴモラの回と、僕の大好きな料理対決の回も探してみてください。
そして冒頭でも話したのですが、今回の取材にあたって先生の新作、『マンガに、編集って必要ですか?』の下絵を特別に見せていただきました!
▼▼新作『マンガに、編集って必要ですか?』のイメージ画像と下絵▼▼
(C)青木U平/新潮社
どんな漫画になるのか、とっても楽しみですね!!
青木先生、こんな激レア画像を公開させていただき、ありがとうございます!!
今回紹介した漫画を読むには
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