佐々木倫子先生の『動物のお医者さん』は、札幌市のH大学獣医学部を舞台にした獣医師を目指す学生の日常コメディ漫画。
2000万部以上の売り上げを誇る大ヒット漫画で、この漫画の影響でH大学のモデルとなった北海道大学獣医学部の志望者数が急増するという社会現象も巻き起こした作品です。
連載自体は白泉社の『花とゆめ』で1987年から1993年のことと少し古い作品ですが、今読んでも全く古臭さを感じることなく何度でも繰り返し面白く読んでしまう名作です。
今回はそんな『動物のお医者さん』の魅力を紹介していきます。
あらすじ
引用元:Comee.net
主人公 の西根公輝(にしね まさき)は、友人たちからは「ハムテル」と呼ばれて親しまれています。
高校生の時に偶然、H大学獣医学部の漆原(うるしはら)教授からシベリアンハスキー犬の子犬・チョビを押し付けられてしまいます。
すでにネコやニワトリも飼っていたハムテルは、獣医になれば治療費が浮くと考え、親友の二階堂昭夫(にかいどう あきお)と一緒に家の近所のH大学に入学します。
実習や学ぶことの多い獣医学部で、ハムテルたちは多忙ですが、自由奔放な動物たちや変な教授、先輩に振り回される彼らの日常を描いた楽しい作品です。
『動物のお医者さん』は個性的なキャラクターがたくさん登場する
『動物のお医者さん』は、バイオレンスなドラマやロマンチックな恋愛ストーリーが描かれるわけではありません。
馬やネズミが脱走したり、動物の治療でてんやわんやしたりすることはありますが、ハムテルたち獣医学生の学校生活をメインに描いたほのぼのとした作品です。
それでも飽きることなく楽しめるのは、魅力的な登場人物が多いからです。
漆原教授や菱沼聖子(ひしぬませいこ)のように、マイペースで非常識なことを当たり前のように人に押し付けてきて周りを振り回すような、変だけど憎めない人たちも多く登場します。
主人公・ハムテル(西根公輝)
主人公のハムテルは、冷静で客観的な青年。
周りの個性的な面々に振り回されても決して動じることはありません。
漆原教授からは、初対面で「高校生にしてはじいさんぽい落ち着き」と評されるほど。
他の学生がテストに追われてカンニングペーパーを作ったり、お菓子を買ってきてレポートと一緒に提出しようとしたりする際も、困惑した表情を浮かべながら「そんな時間があったら勉強をしたほうがいいのでは……?」と心の中で思い、友人たちには迎合しません。
しかし、空気が読めなかったり無神経だったりというわけではなく、適度な距離感でアドバイスをしたり学生たちの間でリーダーシップをとったりと、頼りになるキャラクターです。
しかし、天然と思われる発言も多く、二階堂からツッコミを入れられることもしばしば。
真面目な態度でとぼけたことを言うところが面白いです。
例えば、ネーミングセンスはあまりないようで、家族からも残念と思われているほど。
小学生の時に買ったひよこには「ヒヨちゃん」と名付けてしまったため、みんなから恐れられる乱暴者の立派なオンドリに育った現在も名前は可愛らしく「ヒヨちゃん」のまま。
漆原教授にもらったスナネズミ(医療実験に用いられることが多いが、ペットとしても飼われるネズミ)には、可愛くない方に「おとうさん」、可愛い方に「お母さん」と名付けましたが、性別を間違えていたようでしばらく「“おとうさん”が子供を産んだ」、「また“おとうさん”が子供を産んだ」と言って二階堂に呆れられていました。
ハムテルの親友・二階堂
二階堂は、ハムテルの高校時代からの友人で、大学からプライベート、実習を兼ねてのバイトまでほとんどハムテルと行動を共にしています。
ハムテルが初めてバイトをする際には、ハムテルがちゃんとできるか心配で見にきてくれるほど仲良しです。
この時のバイトは3時間で7匹の犬を散歩させるという内容でしたが、二階堂は「お前のためだ。手伝ってやんない」と言いながらも、ハムテルのバイトを見守ってくれます。
バイトの間に二階堂は、3時間も散歩なんて「犯罪の匂いがする」といってハムテルから聞いた依頼人の家族構成から殺人事件を予想していました。
二階堂は想像力が豊かなところがあって、動物の考えていることを予想したり、トラブルが起きた時に解決策を考えたりしています。
二階堂の作戦失敗に終わることもありますが、柵を飛ぶことができない馬に、何とか飛ぶきっかけを作ろうとしてシナリオを作り、犬にまでそのシナリオの演技をさせようとするなど、突飛な発想が面白いです。
特別な用事もないのに当たり前のようにハムテルの家にいることも多いため、ハムテルの家族やペットとも仲が良く、西根家で飼っているペットたちが起こす事件に巻き込まれたり、ペットの悩みを解決しようと協力したりすることも多いです。
ハムテルが漆原教授からもらったシベリアンハスキーの仔犬に結果的に名前をつけたのも二階堂です。
二階堂は、犬も猫もアシカもカワウソも小さい生き物全てを「チョビ」と呼んでいました。
そのため、ハムテルがどんな名前を付けようか考えている間も、二階堂が「チョビ」「チョビ」と呼んでいたために、仔犬は自分のことを「チョビ」だと認識してしまって「チョビ」という名前になりました。
二階堂はネズミが大の苦手で、姿を見ただけで失神してしまうため、ネズミのいる部屋には入れなかったり、ネズミのことは「アレ」と呼んだり、本に書いてある「スナネズミ」という文字に触れただけで手を洗ったりと徹底して避けています。
しかし、二階堂はハムテルと一緒に獣医学部に進んでしまったために、実験や病院での実習などでどうしてもネズミから逃げられない場面もでてきます。
脱走や迷子になったスナネズミが大学内をチョロチョロと動き回る場面も多いです。
教科書のネズミの写真に、「わたしはリス。しっぽをそられたの」と書き込んで自分をごまかしたり、ネズミアレルギーのフリをしようとしたりと、二階堂が毎回どのようにネズミに対処しようとするのかは『動物のお医者さん』の見どころの1つでもあります。
へんな先輩・菱沼 聖子(ひしぬま せいこ)
ハムテルたちの先輩である院生の菱沼さんは、とにかくマイペースで独特の空気の中で生きています。
企業が商品化したいと言ってくるような研究成果を2度も出しているすごい人です(作中では、役に立つ新しい菌を発見できるのは才能や頭脳よりも、宝くじに当たるくらいの確率で細菌を見つけられるかどうかが重要と言われているため、菱沼さんは運が非常に良い人とされています。
それゆえ、ねたまれる事もあります。)が、動きや喋り方は非常にゆっくりで、「とろい」と指摘されることもあります。
その独自の空気感が面白いです。
ライバルの院生に喋り方を指摘された時はムッとして普通のスピードで喋り、周りを驚かせますが、すぐに「口は動くんだけど頭の考えるのが追いつかない〜」と諦めて周囲にいた学生を脱力させていました。
豚にコレラの予防接種を打つ際も、準備に時間がかかりすぎたせいで、これから注射を打つことを豚に気づかれてしまい、豚がヒステリーを起こしてしまいました。
その後も菱沼さんの存在自体が豚にとってのストレスとなってしまい、ちょっとした事件が起こって豚小屋に出入り禁止を言い渡されてしまったほどです。
菱沼さんのマイペースな性格は動物たちにすら影響を及ぼし、数々の不可解な事件のきっかけとなっています。
また、嫌なことがあれば、教授に対してでも愚痴や文句を言ったり、ハムテルと二階堂が自分に内緒にしていることがあると知った際は、「教えないとチョビの顔をなめちゃうから〜〜〜」と舌をベロベロと出したり、周りを気にせず、自分の欲求に忠実なことが多い人です。
しかし、後輩が困っている時は、自分の経験や知識を教えたり、単位を取りたい学生がレポートと共にチョコを提出して教授から賄賂ではないかと怪しまれた際に助け舟を出したりと面倒見の良い一面もあります。
感情豊かで周りを振り回すことの多い菱沼さんは、読者も飽きさせないキャラクターです。
まとめ
『動物のお医者さん』は、動物たちがいろんな事件を巻き起こすのを見るのも楽しいです。
動物にも1匹1匹に性格があり、図々しかったり、乱暴者だったり、お調子者だったりと様々でとてもかわいいです。
そして、動物だけでなく、人間のキャラクターもとっても個性的。
読むたびにいろんなキャラクターに感情移入することができて、好きなキャラクターが増えていくこと間違いありません。
そして、大学を卒業する際、ハムテルと二階堂がどんな将来を選択するのか、ぜひ最後まで見守ってみてください。
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