咲坂先生自身についてのお話
先生に似てるキャラ
なかむら: 先生は全作品の中だと一番誰に近いなって思いますか?
咲坂: えー全作品ですか?
なかむら: 以前、「ふりふらの中だったら?」っていうのは聞いたことあるんです。
田舎: えー!そうなんですね!
なかむら: その時誰って言っていたと思いますか?
田舎: わからないです!(即答)
咲坂: え、答え言っていいですか? ……ん?誰って言ったっけ?(笑)
なかむら: あははははは(笑) 先生は理央って言ってましたよ!
咲坂: 理央かぁ! 今はねー、もう理央は片が付いてるから……(笑)
なかむら: じゃあ今は違うんですね!
咲坂: 全作品の中で自分に近いキャラクターだと……、それぞれ自分の一部を強調したのがそれぞれのキャラクターなんですけど、中でも一番感情移入して描いていたのは洸ですね。
なかむら: わー! そうなんですか!
咲坂: 洸が最初の方でいろんなことを受け入れなかったりグダグダしていたりしてた時でも私はすっごく洸の味方でした。
なかむら: そうですよね!洸って切ないんですよね。
咲坂: でも私、ふりふらだと理央って言ってたのかぁ……。
なかむら: そうですよ!(笑)変わるもんなんですね! もしくは私の幻聴だったか……(笑)
咲坂: あはは(笑)でも最初の段階から私は山本家の二人が心配だったんですよ。だから最初の考えでは由奈と和臣が山本家の二人をなんとか救ってあげてって思ってたんですけど。まぁいい感じでお互いに刺激し合っている関係なので、どっちがどっちを救うじゃなくてお互いに救い合う関係になっていってるんじゃないかな?って今は思ってます。
なかむら: ……すごい。すごすぎる!
漫画家を目指したきっかけ
田舎: 先生はいつ頃から漫画家になりたいって思われたんですか?
咲坂: 24歳ぐらいの時ですかね?
なかむら: 漫画家さんの中では早くはない方ですよね?
咲坂: ですねー。漠然と漫画家になりたいとか思ってたことはあったんですけど、いたずら書きで漫画を描いてみたときに1ページたりとも描けないってことに気づいて(笑)しかも周りに漫画家の人もいなかったので、「漫画家ってそうそうなれないんだ」って思って、選択肢にも上がってなかったですね。
なかむら: 一度普通に就職されたんでしたよね?
咲坂: 働いてました。
田舎: そうなんですか! 24歳の時に突然漫画家を目指したきっかけは何だったんですか?
咲坂: きっかけは……普通に働いていたら、通勤ラッシュに出会いますよね。
なかむら: ありますね。
咲坂: 「バカなの、この時間!おかしいじゃん」って思って。もちろん交通費は出ます。でも満員電車に拘束されている時間には何も出ない。
一同: 爆笑
咲坂: ラッシュって本当に何もできないんですよ。電車に揺られる時間の分も寝ていられる職業といったら、「家でやるしかないじゃん」って思うじゃないですか。
なかむら: 天才。
咲坂: そうなんですよ(笑)「身支度する時間も端折れる。全部寝る時間に使える!」って思って、家でできる仕事で一番初めに思いついたのが漫画家だったんです。それで、やってみようかなって。
田舎: えー! すごすぎる!
なかむら: ちなみにどのぐらいで、漫画一本でやっていかれるようになったんですか?
咲坂: 結構ギリギリまでバイトしてましたね。『ストロボ・エッジ』の連載が始まる前くらいまでバイトしてましたね。
田舎: えー! でもそれまでも単行本は何冊も出されてますよね?
咲坂: そうですね。あ、ストロボの前の短期連載くらいまでかな? それまではずっとバイトしてました、パチンコ屋とかで(笑)
なかむら: あははは! パチンコ屋だったんですね!
咲坂: そう! 時給がいいんですよ(笑)漫画に時間を使いたくて。
なかむら: 判断がすごいテキパキしてますね。
咲坂: 一番大事なものは何かって考えていたので。
密かに先生が苦労しているもの
なかむら: ざっくばらんな質問になっちゃいますけど咲坂さんの単行本の柱(※コミックスで空きスペースに作者さんがコメントやイラストを描いてくださるところ)のボリューム、すごいですよね? あれだけで1冊できると思うんですよ。
咲坂: あー! あれ、大変なんですよ(笑)
なかむら: やっぱりそうですよね! だってあれって漫画を描く作業と全く別の作業じゃないですか。
咲坂: そうなんですよ。こんなに巻数を出していたら、もう自分の小ネタはほぼ使い切ってしまってるんですよね(笑)1個思いついたらスペース足りないぐらいなんですけど、その思いつくまでが大変なので、あれを始めたのは失敗だったなって思ってます(笑)
なかむら: 先生の言葉がしっかり書かれてて、こちらとしてはありがたい限りですよ!(笑)
咲坂: そこでお二人に相談なんですけど……! もし違う連載を始めましたっていうタイミングで、急にそれを全く無くしたらどう思いますか……? 嫌いになりますか?(笑)
一同: 爆笑
なかむら: 1つは絶対欲しいって思います!(笑)でも無くして違うことをしてもそれはそれで「あ、なんか新しいこと始めた!素敵!」っていう風にも思います。例えばもしそれがただの空白だったら「あれ?」ってなりますけど!「……こちらが好きに書いていいのかな?」みたいな。
田舎: フリースペース!?(笑)
咲坂: え、それいい。頭いいですね! メモ帳として使えるって……(笑)
一同: 爆笑
なかむら: 柱に書いているようなことを別のエッセイ本として出して一回完成させてから、次のことを始めるっていうのもありじゃないですか?
咲坂: 実は、エッセイもやってみたいんですよね。
なかむら: めちゃくちゃやって欲しいです!(笑)
田舎: 僕も少女漫画の柱を読むのが好きなんですけど、咲坂先生の柱も本当に大好きで。先生のことが知れて読んでいて楽しいですよね。
咲坂: 私も他の作家さんの柱とかを見るとその人の日常とかを知れて楽しいなって思ったから書き始めたんですけどねー……。誰にも言われなかったらナチュラルにシフトしようと思ってたんですよ。挨拶とかあとがきとか柱の文字を一切無くして、いい感じの模様とかにシフトチェンジしようかなと……(笑)
なかむら: でも今日バラしちゃいましたね(笑)
田舎: わ、じゃあ、この会話を記事にするかどうかは後で一緒に決めましょう!(笑)
咲坂: あはは! そうですね! ありがとうございます!(笑)
俯瞰と主観の目を同時に持つ女
なかむら: ストロボ6巻にも掲載されてる読み切りで『カラーレス・ドリーマー』っていう、19歳の女の子とバンドマンの男の人のお話があったじゃないですか。
咲坂: あーはいはい!
なかむら: 私、青春モノの先生の作品に慣れていたので、すごく新鮮な同居生活のお話だったんですけども。先生が他に青春モノ以外に描いてみたいストーリーはありますか?
咲坂: うーん。まだ高校生が好きだなっていうのがあるので……。高校生の不自由な感じを描いてる方が正直楽しいです。思春期だからこそ応援したくなるっていうのがあるので、そっちの方が今は描いてて楽しいですね。
なかむら: 基本的に少女漫画って、主人公の女の子に感情移入しながら、相手の男の子を理想の男子として見てしまうんですけど、先生の作品の男子はみんなちゃんと地に足がついていて、もどかしいところとかもいっぱいあって。ただ女の子目線の理想を描いているんじゃなくて、先生は男の子キャラたちにも想いを投影しているからこそ、「この子たちにはこの子たちの想いがあって、だから悩んだりしてるんだなー。この子たちはまだ高校生なんだ」って改めて思わせてくれます。
田舎: 作品の中で生きてるって感じますよね。
なかむら: そうなんですよ!
咲坂: 私が描く男の子って確かにちょっとめんどくさいとは思うんですよ。「男の子って実はこんなに深く考えてなくて単純だよ」って前の担当さんにも言われてたんですけど、それをそのまま描いても自分が好きになれないから。かっこいいだけの男の子も別につまんないじゃないですか。めんどくさい人の方が攻略しがいや面白さがある、っていう感覚ってあるじゃないですか。
なかむら: 紐が解けていくんですよね。登場人物たちが絡み合った紐を優しく解いていく。だからこそ想いが繋がった瞬間がたまらないんですよね。キャラクターたちを愛している感じが先生から伝わってきます。
咲坂: そうですね。女の子たちに対して「そんなつまんないやつ好きにならないで!」って思うんですよ。「男の子が王子様じゃないってことをあなたたちならわかるでしょ?」っていう気持ちで女の子たちにも恋をさせたいので。最初の入り口は「かっこいいから」でもいいんですけど、弱い部分とかもひっくるめて、それでも好きって言える女の子が描きたいんです。そういう女の子を描きたいから、私の描く男の子はだんだんめんどくさいやつになっていくんだと思います(笑)
なかむら: 先生は本当に俯瞰の目と主観の目を同時に発動させてる方ですよね。
咲坂: えーっ! そうなんですかね。いいですねそれ(笑)是非記事でも使ってください(笑)
なかむら: 今回のタイトルですね。「俯瞰と主観の目を同時に持つ女」。
一同: 爆笑
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