【インタビュー】新連載スタート!日暮キノコ先生の『個人差あり〼』にかける思いや過去作のマル秘話を聞いてきた!

【インタビュー】新連載スタート!日暮キノコ先生の『個人差あり〼』にかける思いや過去作のマル秘話を聞いてきた!
     

漫画と酒と日本語ラップをこよなく愛する人。漫画蔵書5000冊以上。漫画はオールジャンルなんでも読みます。お酒もオールジャンルなんでも飲みます。元よしもと漫画研究部副部長。現在は人生模索中。

   

本日、11/22から『モーニング』にて新連載『個人差あり〼』をスタートする日暮キノコ先生に連載開始直前インタビューに行ってまいりました!

新連載にかける思いや過去作のマル秘話まで色々と語って頂きました。

『モーニング』を買って『個人差あり〼』と併せて楽しんで頂けますと幸いです!

また今回、新連載のお祝いとして日暮キノコ先生の直筆イラスト付サイン入り色紙の読者プレゼント企画まで実施させて頂けることになりました!

 

イラストが仕上がっていく様子が美しすぎて見惚れてしまいました!!

応募方法は記事の最後にありますので、ぜひ最後までご一読を◎

 

【プロフィール情報】

日暮キノコ
2005年『別冊フレンド』増刊誌に掲載された『FASHION FREAK’S ROCKY ROAD』でデビュー。
その後活動の拠点を青年誌へと移す。
代表作にNHKにて実写ドラマ化された『喰う寝るふたり 住むふたり』や、引きこもりの兄と妹のリアルな兄妹模様を描いた『ふつつか者の兄ですが』等がある。
11/22から『モーニング』にて新連載『個人差あり〼』開始。

新連載!『個人差あり〼』について

河野: 今日は過去の作品から新連載『個人差あり〼』の事、日暮キノコ先生自身の事まで色々お聞かせ願えたらなと思います。よろしくお願いします!

日暮: よろしくお願いします。

河野: 早速にはなりますが、新連載が始まる『個人差あり〼』について聞かせてください。ネームで第1話を先に読ませて頂いたのですが、めちゃくちゃ面白かったです!

日暮: ありがとうございます!

 

 

河野: 元々あたためていた設定なんですか?

日暮: ここ半年くらいですかね。『ふつつか者の兄ですが』の最終巻が出たのが去年の7月で、そこからゆるゆる休みながら、次の連載案は頭の中でずーっと考えてはいたんですよ。月1くらいのペースで打ち合わせも続けていて。でも焦ってもやっぱり出ないんですよね。その間に何個か「この設定でいこう!」っていうものもあったんですけど、結局違うなってボツにして。

河野: なるほど、案出し期間があったんですね。

どんな家にも必ず、大なり小なり“問題”がある。恋に友情に忙しい、華の女子高生・田処志乃(たどころ・しの)。彼女の悩みは、引きこもりの兄・保(たもつ)の存在。親しい友人にも、自分はひとりっ子であると偽り、頑なに秘密にしてきた。そんな志乃の気も知らず、保が突然「脱・引きこもり宣言」をして――。まだ間に合う!? 作り直しの“家族”物語、開幕!!

引用元:Comee.net

↓試し読みができるサービス↓

 

日暮: そうですね。『個人差あり〼』の設定は最後の方に出た案です。私が過去に『別冊フレンド』で描いていた読み切りも非現実的な設定の作品が多かったんですよ。『世にも奇妙な物語』が好きなので。怖いのも好きだし、ユーモラスな異世界感のある話も好きで。

河野: 僕も『世にも奇妙な物語』の世界観がすごく好きで、毎回観てます。

日暮: 面白いですよね。『個人差あり〼』の案が出た時は、どこかで「ああいうお話は読み切りだから出来るんだよな」って思っていて。長期の連載でやろうとしたらどこかで話が破綻するか設定に縛られて窮屈になってしまいそうだったので、連載案では選択して来なかったジャンルなんです。でも、「描いてもいないうちから投げ出さずに、描きたいんだから描いてみよう!」って奮起したんです。そこから練り上げていって。

河野: そういう背景があったんですね。これからどんどん作中で明らかになっていくと思うんですけど、テーマは「異性化」ですよね?

 

©日暮キノコ/講談社

 

日暮: そうです。異性化漫画というと、『らんま1/2』が最初に思い浮かびました。その後に他にこの設定だとどういう漫画があるのかを調べたんですよ。そしたらエロ漫画には割と頻繁にある設定で(笑)あとは性別が変わる設定って少年誌向けのラブコメでたまに使われることはあっても青年漫画で使われてないなって。社会人で急に性別が変わるっていうのはどこともかぶってないなって気づいたんです。言うなれば社会人版、地に足のついた『らんま1/2』みたいな。

河野: ぶっちゃけたお話になりますが、僕も最初に読ませて頂いた時に「エロ漫画でたまに見る設定だな」って思いました(笑)ただ、エロ漫画はエロに特化している分キャラクターのバックボーンも性別が変わるキッカケもしっかりと練られた設定では無い場合が多かったりしますよね。ほかにもエロ漫画は基本的に1話完結なので、その先はわからないっていうのが多い印象です。『個人差あり〼』はその先を描く訳ですから、どうなるのか予想がつかないので凄く楽しめますね! 1話を読んで思ったのは、凄く世界観が作り込まれているなと。非現実的な設定なのに現実に実際にあってもおかしくないような世界だと思いました。

日暮: そう感じていただけたなら良かったです!

河野: キャラクターはどのように固めていったのですか?

日暮: 特異体質モノをずっとやりたいって思っていたんです。それこそ過去にも「好きな人への気持ちを溜め込み過ぎて体から花が咲いてしまう女の子」の話とか描いていました。漫画ならではの表現が好きなので。でも特異体質モノをやりたいなと思いつつも良いアイデアが出て来なかったんです。今までの作品のキャラクターはカップルだったり幼馴染だったり兄妹だったり、コンビのものが多いというか。

河野: 確かにそういう設定のものが王道パターンですよね。主人公の二人が入れ替わったりとか。

日暮: そうそう。私の漫画は二人主人公みたいな作品が多いなって思っていたので、今回は一人強烈な主人公を作りたかったんです。もともと女の子を描く方が好きなので、強烈なヒロインを作りたいって願望は私の中にずっとありました。それを軸にお話や設定を作っていった時にハマったんですよ。“女”はこれから私の中で究極のヒロイン像として作り上げていくつもりです。晶はもうかなり特殊な状況になってしまっているので、独自のキャラクターになってくれるんじゃないかなと思っています。

先生の描く、女性の性に対する思い

河野:  少し生々しいお話になってしまうかもしれませんが、先生の描く漫画の女性キャラクターは性欲がちゃんとあるキャラが多いですよね。

日暮: 確かにそうですね(笑)それこそ少女漫画で出せなかった部分かなと思っています。エロ系少女漫画というのは多々あれど、そのほとんどが女の子側の意思じゃない描写が多いんですよね。男の子の性欲によって「されちゃった系」というか。でも現実だと全部が全部そうではないと思うので。一度「妄想が激しめのHな女の子」キャラを少女漫画で描いたことがあるんですけど、やっぱりそれは少女漫画のネーム会議では通りませんでした。私の表現がやり過ぎだっただけなのかもしれませんけど(笑)でも青年誌に場所を移せば受け入れてもらえるであろうことはわかっていたので。

河野: なるほど。たしかに青年誌だと違和感ないですよね。

日暮: 柏木ハルコ先生の『いぬ』って漫画が大好きなんですけど、本当にHなヒロインなんですよ! 私の中での究極のヒロイン像の1つですね。

河野: 『いぬ』を読んで「青年誌ならここまで描いちゃって良いんだ」という線引きがわかったということですね。

日暮: そうですね。私はまだあそこまで描けないけど、凄く自由だなと思いました。『いぬ』のヒロインの清美はHなことばっかり考えてるのに全然憎めないしずっと可愛いんですよ。それってやっぱりキャラクターのブレなさなんですよね。本当にスジの通ったHなヒロイン!(笑)見ていて清々しいですね。本当に大好きな作品です。『いぬ』の文庫版の帯にピエール瀧さんの「そこのエロい女子!読め!!」ってコメントがあって、それを見て「買わなきゃ!」と思って買った思い出があります(笑)

河野: その帯を見て買うって決めた日暮先生も凄いですけどね!(笑)

日暮: 多分そういう時期だったんでしょうね! (笑)柏木ハルコ先生は好きでしたけど、『いぬ』っていうタイトルだけだったら手に取っていなかったかもしれないと思うと帯のキャッチコピーって大事なんだなって気付かされました(笑)

河野: 目につくキャッチコピーは大事ですよね! 『個人差あり〼』の話に戻るんですけど、晶は普通の女主人公じゃないわけじゃないですか。この場合の晶の性欲をどのように描くのか凄く興味があるのですが。

日暮: ふふふ(笑)それはまさにこれから描くところなのでお楽しみにとしか言えないですね。

河野: 早く続きが読みたいです(笑)

『個人差あり〼』タイトルの由来

河野: ちなみに今回、『個人差あり〼』というタイトルはどのようにつけられたのですか?

日暮: タイトルはかなり紆余曲折しましたねぇ(笑)タイトルって作品が始まってさえしまえばなんとかなるものだと思うんですよ。でも担当さんと私だけでこのお話を作っている時、どんな仮タイトルをつけてもしっくりこなかったんです。なので私が最初に考えてたタイトル案でゴリ押ししようと思ったんですけど、それもイマイチ反応が悪くて(笑)

河野: もしよろしければその最初のタイトル案ってお聞きしてもいいですか?

日暮: 『インクルージョン』ってタイトルでした。意味もちゃんとあったんです。私は鉱物が割と好きで即売会に行ったりもするんですけど。インクルージョンは「鉱物の内包物」という意味で使われたりする言葉なんです。

河野: 「鉱物の内包物」……?

日暮: 例えば水晶の中に入っている別の結晶などを指す言葉なんですけど、そのインクルージョンを不純物として見る人もいれば、美しい物であったりそれを味と捉える人もいるんですね。自分の中にある「異性性」みたいな物を表したかったんです。男性だったら、心も身体も男性だけど、どこかで女性的な見方をする人が持つ異性脳という意味での内包物というか。私自身も男性的な目線を持っているなぁと思う時があるので。でも説明するのに時間がかかるし、話がしばらく進まないとなかなかその話題が出てこないし、色々あって最終的に『個人差あり〼』になりました(笑)

河野: 1話目を読んだ時点では『個人差あり〼』というタイトルの意味は完全には分からなかったのですが、この後もうちょっと『個人差あり〼』というタイトルに沿った出来事だったり何かが起こっていくということですか?

日暮: そうですね。『個人差あり〼』も最初から意味が通じるタイトルではないと思っています。

河野: それに比べて『喰う寝るふたり 住むふたり』『ふつつか者の兄ですが』はすごくストレートでしたよね(笑)

日暮: その2つは全く迷わず出てきたタイトルですね(笑)そのまんまっていう。

潜入取材!そこで掴んだもの

 

河野: 『個人差あり〼』を描くにあたって何か取材などはされましたか?

日暮: LGBTの方にお話を聞いたり、本を読んで勉強したりしました。

河野: 「性」について描くのでデリケートな部分ではありますもんね。

日暮: 気をつけている部分ではあります。

河野: 他には何か取材されましたか?

日暮: ついこないだは「女装と女子会」っていう女装男子と女装男子に興味がある女性のお見合いイベントに担当編集さんと潜入取材してきました。

河野: 楽しそう! そんなイベントがあるんですね! 僕、実は元々お笑い芸人をやっていたので、ネタで女装する事がよくあったんですよ。お客さんから「かわいい!」とか言われると本当に嬉しくて女装するの大好きでしたね。化粧も少し勉強したり。今はもうタイミングも無くなりましたが機会があればまたしたいですね。

日暮: やっぱり女装って男性の特権だなって思うんですよ。女性が男装ももちろんできますけど、普段からボーイッシュな格好をすることはできますし、女装ほど変われないんですよね。女装は本当にもう変身じゃないですか。見た目をガラッと変えられるっていうのは羨ましいです。

河野: 確かに言われてみるとそうですね!

日暮: 私の担当編集さんは男性で、女装なんてした事の無い凄くガタイのいい方なんですけど、その女装子イベントでちゃんとプロの方にメイクしてもらって。当日会場で担当さんと待ち合わせしていたんですが、担当さんはすでに女装している状態だったんです。その時に驚いたことがあって、その担当さんとは6年くらいの付き合いなんですけど、私から無意識に「お疲れ様です」って肩をトントンと叩いていたんです。今まで一度もボディタッチなんてしたことなかったのに、見た目が女性っぽいっていうだけで自分の心の壁が少し薄くなっていたんですよ。

河野: 同性と接する時のような?

日暮: そうなんです。なんの意識もせずにボディタッチをしてしまって自分でも驚きましたね。見た目が変わるとこうも変わるものかと。

河野: その経験は『個人差あり〼』に活かせそうですか?

日暮: そうですね。なかなか出来ない体験だったのでどこかで必ず活かせると思っています。

 

 

▶︎Page.2:少女漫画から少年誌への転換、連載のウラ話などは次ページをチェック。

 

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