『放浪息子』はLGBTの問題についてどのように描いたのか考える

『放浪息子』はLGBTの問題についてどのように描いたのか考える
     

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近年、世界中で恋愛に関する常識が変わってきています。

昔から恋愛を扱った作品はとても人気ですが、最近はLGBT(同性愛やトランスジェンダーなどのセクシュアル・マイノリティ)に配慮するような作品が多く増えています。
例えばディズニーが制作した映画『美女と野獣』は古典的な男女の恋愛の物語ですが、作中で同性愛と受け取れる描写を入れたことで、大きな話題になりました。

今回は志村貴子さんが描く『放浪息子』で、作者がLGBTをどのように描いているのかを考えていきたいと思います。

『放浪息子』の紹介

本作は『コミックビーム』にて2002年12月号から2013年8月号まで連載された、志村貴子さんによる作品です。
2011年1月にはフジテレビの“ノイタミナ”枠でテレビアニメが放送されていました。
物語は女の子になりたい男の子の二鳥修一と、男の子になりたい女の子高槻よしのを中心に描かれています。

小学5年生のある日、よしののクラスに修一が転校してくるところから物語は始まります。
隣の席になった2人は話す機会も増え、ある日グループの課題を一緒にするため、よしのの家に行きます。
そこで、修一はよしのの部屋にあったワンピースに目が止まります。
よしのは親に買ってもらったその女の子らしいワンピースを気に入っておらず、「いらないからお姉ちゃんがいる修一にあげるよ」ということで、修一はそのワンピースを家に持って帰ることになりました。

修一は男の子の格好をするよりも、ワンピースやスカートなどの女の子の格好に憧れを抱いていました。
そのことは誰にも言わずに内緒にしていましたが、ある日クラスメイトの千葉さおりが修一の家に突然やってきた際に、女装姿のまま応対してしまい、秘密が知られてしまいます。
さおりは女装姿の修一のことがとても気に入っており、それを見たいがために学校で役と演者の男女の性別を逆転させた演劇をしようと言いだします。
そのような経験があり、修一は徐々に女装が好きであることを自認していきますが、世間やクラスメイトとの目などの偏見とも戦うことを強いられていきます。

本作は3人の関係を思春期の悩みや体の変化を交えながら、小学5年生の10歳から、高校生まで成長する様子を描いています。

現代でも重要なLGBTの問題と本作

LGBTの問題は年々注目度を増しています。
2018年はマイノリティに対して排他的な論文を国会議員が発表したことにより、大きな問題になりました。
アメリカでも基本的にはLGBTの方を社会が受け入れる方針でしたが、どこまで権利を拡大するべきか、議論は続いています。
誰が誰を好きになろうが個人の自由だ、という意見もあれば、結婚などの社会制度も絡んでくるため、権利拡大に慎重な意見もあります。

志村貴子さんの作品はLGBTについて、深く踏み込んだ作品が多いのが特徴です。
特に本作は子供から大人に成長するまでの様子を描くことで、繊細な思春期な感情と、LGBTの難しい悩みを描くことに成功しています。

例えば、よしのは中学校に上がるとバスケ部に入部しますが、先輩から「ブラをつけろ」と言われてしまいます。
成長に伴う体の変化にショックを受けて倒れこんでしまい、胸が小さく見えるブラを探すようになります。
また修一は中学のクラスメイトであり、女子生徒の更科千鶴が男子の制服を着て登校している姿に衝撃を受けます。
修一は元々女の子になりたいこともあり、女子の制服を着て中学校に登校しますが、大きな問題になってしまうのです。

女子生徒が男装をしても問題にならないが、男子生徒が女装をすると親を呼ばれるような大問題に発展する。
考えてみるととても不思議なお話ですが、現代社会の一面を見事に切り取った描写と言えるでしょう。

性に関する悩みは人それぞれ

性的指向がストレートな方(異性が好きな方)は、女装や男装を好むと聞くと、同性愛者だと考えてしまうかもしれません。
しかし修一もよしのも自身の性認識に疑問を抱いていますが、恋愛対象は異性です。
また、千鶴は男装を好んでいますが、自分を女性と認識しており、性に対して違和感を抱いていません。
一方で修一の親友である“有賀誠”は女装に憧れがあり、さらに恋愛対象は同性である男性です。

このように、異性の着るような服装を好むという共通点がありながらも、その恋愛対象は様々です。
どうしてもノーマルな人たちはLGBTの方をイメージで語ってしまう部分があるかもしれません。
しかし、当然のことながらそんなに簡単な話ではありません。
本作はLGBTの方々の個性や多様な悩みを描いている、とても意義のある作品です。

まとめ

いかがでしたか?

LGBTの話と聞くと、少しばかり抵抗があったり、あるいは難しそうと感じたりしてしまう方もいるかもしれません。
しかし、本作は1人1人のキャラクターに向き合い、思春期の瑞々しい感性を持ち、悩みながらも成長する等身大の少年少女たちを描いています。

ほんの些細な描写でも学生時代のことを思い出すような繊細な表現に溢れており、懐かしさを覚えるのではないでしょうか?
また、学生の方はちょっと女性っぽい言動をする男子をからかってしまったり、異性に対して過度な嫌悪感を抱いたりする姿に「この気持ちわかるな」と共感してもらえると思います。
決してマイノリティのお話だからと言って特別なことを描くだけではなく、一般的な学生と同じような悩みも抱いているのです。

LGBTについて勉強しなさい! という教育的な側面の強い作品ではありません。
ぜひ皆さんも本作を気軽に読んで、少しでもLGBTについて考えてみませんか?

志村貴子作品の紹介の記事はこちら!

 

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