Comee mag.をご覧の皆様初めまして。
高橋えのぐと申します。
今回は『ヤングアニマル』で『双葉さん家の姉弟』を連載中の佃煮のりお先生にお話を伺いました。
女装する少年、いわゆる“男の娘”というジャンルで大人気の作家さんです。
また、漫画家でありながら、アイドル活動やバーチャルYouTuberの運営など、幅広く活躍されています。
そんな先生の連載作品、『双葉さん家の姉弟』の第4巻が11月29日に発売されたとのことで、新刊についてだけでなく、先生の取り組みについて色々とお話しを伺って来ました。
記事の最後には、11月29日発売の『双葉さん家の姉弟』第4巻のサイン本プレゼントキャンペーンの情報も記載していますので最後までお見逃しなく!
佃煮のりお
2011年デビュー。
2014年デビュー作であり代表作である『ひめゴト』がアニメ化。
現在は『ヤングアニマル』で『双葉さん家の姉弟』を連載するかたわら、YouTube『佃煮のりおチャンネル』にてラジオ配信を行い、バーチャルYouTuber(Vtuber)“犬山たまき”の運営を行っている。
女装少年から巨乳へ……最新作とこれまでの軌跡
高橋: 今日はよろしくお願いします。
佃煮: よろしくお願いします。
高橋: 実は、私も以前漫画家をやってたんですよ。のりお先生がデビューされた男の娘専門雑誌の『わぁい!』と同じ、一迅社で同時期に連載していて……。
佃煮: えー凄い!
高橋: 今はよしもとの芸人をやってるんです。
佃煮: 経歴謎すぎません?(笑)漫画家から芸人になるっていう……。
高橋: あはは(笑)私がのりお先生を知ったきっかけが、デビュー作の『ひめゴト』の主人公のひめくんの抱き枕カバーの絵で。Twitterで回ってきて、「なんて素晴らしい絵を描く人なんだ!」と思ってフォローさせてもらったんですよ。
佃煮: ひめくんの抱き枕カバーは何回も出てますからね。
高橋: 今回、インタビューが実現して本当に嬉しいです。お忙しいので無理かなと思ったんですけど……。
佃煮: ちょうど単行本も発売されますし、新規の人が増えたタイミングだったので、インタビューを受けたいなって思ってて。色んな事しすぎて「佃煮のりおって何者?」っていう人が最近増えてきて。漫画家なのかVtuberなのかアイドルなのか、みたいな。
高橋: 今回はそんな新規の方にもわかりやすい記事になるようにインタビューが出来ればいいなと思っております。
新キャラは待望の◯◯!最新刊の見どころ
高橋: まずは『双葉さん家の姉弟』の第4巻の発売、おめでとうございます!
佃煮: ありがとうございます。なんとか単行本作業が間に合いました(笑)
高橋: 4巻の見どころはどんな部分ですか?
佃煮: そうですね、やっぱり……おっぱいですかね。
高橋: それは……毎回楽しみにさせていただいております(笑)4巻では新キャラが出るんですよね?
佃煮: そうですね、新キャラでロリキャラが出てくるんですよ。小学生が出てくるんで。
©佃煮のりお/白泉社
高橋: ロリキャラって、のりお先生の作品では珍しいんじゃないですか?
佃煮: 珍しいですね。もともとデビュー前はショタとかロリを描いていたんですけど、デビューした後に、「ロリ系の絵は売れない」って編集さんに言われちゃって、絵柄を直したんですよ。頭身高めのキャラに直して……だからデビュー前の絵柄と今では結構違うんですよ。
高橋: だから『ひめゴト』の中でも作画が変わったんですね。
佃煮: そうなんですよ。その時がまさに指摘された時で……実際直してからのほうが売れたので、間違いはなかったなと思ってるんですけど、今回は満を辞して久々のロリキャラを描かせていただきました。
高橋: おお!
佃煮: 一度『双葉さん家の姉弟』の特別編をニコニコ静画に描かせていただいて、寧子お姉ちゃんが小さくなっちゃうっていう夢オチ回みたいな話を描いたんですよ。それがコメントで好評だったんです。「ロリ最高だな」みたいな。そしたら、編集さんが「佃煮先生のロリは評判がいいみたいだから出しましょう」って言ってくださって、今回登場させる事になりました。
高橋: 楽しみですねそれは。
佃煮: みなさんが好きなキャラだといいなと思うんですけど。
絶対に売れる漫画を!『双葉さん家の姉弟』
高橋: 4巻の見所はおっぱいとおっしゃっていましたが、『双葉さん家の姉弟』は、出てくる女の子がみんな巨乳ですよね!(笑)
佃煮: そうなんですよ、巨乳しかいない国なんですよ。
©佃煮のりお/白泉社
高橋: それはどうしてなんですか?
佃煮: これはちょっと……悲しい話も含まれてしまうんですけど……。『双葉さん家の姉弟』を描く前に描いていた作品が、『ヒロインボイス』っていう声優漫画だったんですけど悲しいことにめちゃくちゃ売れなかったんですよ。
高橋: ええ~!
佃煮: 声優ファンと漫画を読むファンってイコールじゃないらしくて。
高橋: あ~そうかもしれないですね。
佃煮: よくよく考えたらそうなんですけど、私、声優さんが好きすぎて描いちゃったんですよ。自分の趣味で描いたら全然売れなくて……今描いているような「ドタバタ優しい世界」という感じではなく、業界モノで真面目なストーリーを描いたら、『ひめゴト』のファンの人が引いちゃって……。「お前に求めてるのはこれじゃなくない!?」って感じであんまり売れなくて。次の作品を決める時、とにかく色んな漫画を読んだんですよ。その時売れてる漫画をとにかく買って読んでみたら、全員ヒロインが巨乳だったんですよ(笑)「今は巨乳の時代なんだ!」って思って……。そもそも巨乳の時代じゃなかった事がないんですけど、また巨乳主体になってきたのかなって思って。
高橋: 「バブみ」も流行ってますしね。
佃煮: そう、お姉ちゃんはまさにバブみがあるキャラクターなんですけど、そこをターゲットにして、次は売れるのを描こうって思ったんですよ。自分が描きたいものもそうだけど、とにかく1番は売れるもの、続くものを描こうと思って。巨乳が流行ってるんで、「巨乳しか出さないからお願いだから読んでくれ!」って思って。でも私、最初は巨乳描くの苦手だったんですよ。
高橋: えーそうなんですか?!
佃煮: うまく描けないし、でかすぎるのって可愛いか?って最初は思ってたんですよ。でも胸が大きい友達と毎日遊んでいる時期があって、毎日その子の胸見てたら、「胸大きくないと価値なくね?」ってだんだん感覚が麻痺してきて……(笑)
高橋: いやいやそんな事ないでしょ!(笑)
佃煮: でも、胸大きいのって最高だよなってなったんですよ。で、描いてたら胸大きいのっていいかもって思えてきて。『双葉さん家の姉弟』もすぐに緊急重版が決定して、「やっぱりおっぱいってすげえ!」ってなりました(笑)
高橋: データに基づいて描いた結果ですね。
佃煮: ちゃんと結果が出たので、そこからおっぱい信者になりましたね。
積極的すぎる!?デビューのきっかけ
高橋: のりお先生のデビューのきっかけは同人誌からですよね。
佃煮: はい。もともとは『イナズマイレブン』の女性向け同人誌を描いてたんです。『イナズマイレブン』ってショタがいっぱい出てくるじゃないですか。あの子達を女装させる本を描いてたんですよ。
高橋: その時代から女装を……。
佃煮: そこから『ひめゴト』に繋がって。
高橋: もともと男の娘が好きだったんですか?
佃煮: ジャンルとして意識した事はなかったんですけど、『まりあ†ほりっく』とか、『バカとテストと召喚獣』に吸い寄せられていって……。
高橋: 当時はそういう女装少年がメインのアニメが流行ってましたもんね。
佃煮: 何なんだろうこのジャンル……ってずっと思ってたんですよ。私の趣味はおかしいのかなって……(笑) その後、男の娘のブームが来て、「私が好きなのって“男の娘”って言うんだ!」って思って。
高橋: それが萌えの1ジャンルになって、『わぁい!』っていう雑誌ができて。
佃煮: そうですね、ここで漫画を描きたいなーなんて思っていて。特に持ち込みとかはした事がなかったんですけど、pixivに『イナズマイレブン』の女装絵をあげまくっていたら、『わぁい!』の編集さんから、うちでイラスト描かないかって言われて。
高橋: おお!
佃煮: イラスト描いた後、漫画の方で誘われたりっていうのはなかったんですけど、私が描きたすぎて、担当さんが夏コミに挨拶に来てくださった時に、本人に直接プロットを印刷したものを「見てくれませんか」って渡したんです。
高橋: すごい行動力ですね!
佃煮: 当時私高校3年生だったんですよ。今みたいに大人だったら恥ずかしくて多分できないんですけど、子供だったからイケイケドンドンで(笑)イベント会場でプロット印刷して持ってきた子が初めてだったみたいなんですよ。「この子そんなに頑張るんだったら見てあげよう」ってなってもらえたみたいで。
高橋: 担当さんの気持ちだったらそうなりますよね。
佃煮: それで2011年の秋くらいから連載を始めさせてもらって、学校に行きながら描いてました。『ひめゴト』の1話は高校に通いながら描いてましたね。
男の娘の魅力とは?デビュー作『ひめゴト』制作秘話
高橋: 高校生で!すごいですね。“男の娘”は男性向けジャンルですけど、やっぱり男性の方に読まれることを意識されてるんですか?
佃煮: そうですね、私の絵自体が結構いわゆるオタク向けというか。
高橋: 可愛い絵ですよね。
佃煮: 可愛い絵なので、男性読者が9割になる事が前提ですね。そもそも男の娘ジャンルって男性ファンが8割なんですよ。あとショタコンジャンルも男性8割なんです。
高橋: そんなに高い割合なんですね!のりお先生はトークライブなどもされているじゃないですか。お客さんの層ってやっぱり男性が多いんですか?
佃煮: 100人いたら女性がそのうちの2人くらいですね。だから、高橋さんがファンだって言ってくださった時に、「え、女性なのに?」って思って。めっちゃレアですよ。
高橋: 私、2次元の女の子ばかり愛しちゃうんですよ。男の娘って女の子じゃないですか。女の子に男の心が入ってるみたいな。
佃煮: 美味しい存在ですよね。
高橋: 全人類のいいとこどりなんですよ。女のドロドロした部分も無いし。
佃煮: そう!そこがやっぱり良いんですよ。男性の素敵なところと、女性の素敵なところが合わさったみたいな。
高橋: 『ひめゴト』は途中で男の娘専門の雑誌から一般誌の『月刊ComicREX』に移ったじゃないですか。その際に変わった事ってありますか?
佃煮: 4コマからストーリー漫画に変わってるんですけど、あんまり男の娘男の娘した漫画にするというよりは、男の娘漫画だけど日常モノっていうのを強めにするようには意識しました。『わぁい!』で連載していた時は男の娘ネタを絶対入れるように言われていたので、かなり入れ込んでたんですけど、『REX』に移ったら、「そんなに入れなくてもいいよ」みたいな。「キャラクターがわいわい楽しくやってればいいよ」みたいな感じで。多分男の娘ネタが出てこない話もあったかな?
高橋: 4コマからストーリーに変わって、話作りはどのように変わったんですか?
佃煮: 真面目な話もできるようになりましたね。ストーリーだと見せ場作ったりもできるので、そういう意味で真面目な話もできて。その中で好評な話もあったので、結構真面目な、シリアス回のほうが感想もらう事多かったですね。いつも日常モノをやってるからこそ、シリアス回が光るっていうか。
高橋: ギャップというか。
佃煮: ギャップで、「あ、いい話じゃん」みたいな。
高橋: 『ひめゴト』の主人公であるひめくんもそうなんですけど、先生が男の娘を描く時って、ツーサイドアップのキャラが多いじゃないですか。それってこだわりはあるんですか?
佃煮: あれはもう完全に性癖ですね。男の娘ツーサイドアップだよなって。
高橋: なるほど!(笑)あとは……男の娘の下着が全部縞パン(しましまパンツ)なのはどうしてなんですか?
佃煮: あはは(笑)あれは結構美学があって……男の娘は1番縞パンが映えるんですよ。
高橋: というと?
佃煮: もっこりしてるじゃないですか。もっこりのラインを、縞で描く時に縞が歪むじゃないですか。そうすると、普通のパンツよりももっこり感が出るんですよ。
©佃煮のりお/白泉社
高橋: 強調されるわけですね!(笑)
佃煮: だから縞パンは絶対必須なんですよ! 私、18禁は描かないので局部は描かないんですけど。
高橋: でもそこがいいですよね。想像の余地があるというか。
佃煮: やっぱり全年齢っていうところが重要でもあるのかなって……エロ描けってめっちゃ言われますけどね。
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