【インタビュー】手塚治虫先生のパロディ漫画で話題の漫画家・つのがい先生!『#こんなブラック・ジャックはイヤだ展』開催中

【インタビュー】手塚治虫先生のパロディ漫画で話題の漫画家・つのがい先生!『#こんなブラック・ジャックはイヤだ展』開催中
     
元少女漫画大好き芸人。
少女漫画歴22年、生涯で10000冊以上、5000作品以上の少女漫画を読んでいます。
男りぼんっ子です。男目線で少女漫画の魅力を語ります。
   

田舎はるみの漫画家さんインタビュー企画、第14弾!

今回は、手塚治虫先生の絵にそっくりすぎると話題の『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』の作者・つのがい先生にお話を聞いてきました。

作品の話だけでなく、先生が漫画家になった経緯や今後の目標なども語っていただきました。

記事の最後には、11/24〜12/10まで開催中の『#こんなブラック・ジャックはイヤだ展』の開催情報とComee mag.用に描き下ろしてくださった直筆イラスト付サイン色紙のプレゼントキャンペーンの詳細も!

 

※プレゼント色紙イメージ

 

【プロフィール情報】


つのがい
2015年6月頃からTwitter上に『ブラック・ジャック』の模写の絵を投稿し始める。
2016年8月から手塚プロダクション公式の作画ブレーンとなる。
2017年1月30日に小学館クリエイティブより『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』が書籍化。自身初のコミックスとなる。既刊2巻。
2018年11月24日から12月10日まで大阪にて『#こんなブラック・ジャックはイヤだ展』を開催。

SNSで人気爆発!『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』

人生を大きく変えてくれた『ブラック・ジャック』

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

田舎: 今日はよろしくお願いいたします。初めて先生の作品をTwitterで見たとき、めちゃくちゃ驚きました! ほんとに手塚治虫先生の絵にそっくりですよね。最初に描いたのが『ブラック・ジャック』だったんですか?

つのがい: ちゃんと描いてみようと思って最初に描いたのは『ブラック・ジャック』ですね。

田舎: たしか、元から手塚先生の大ファンだったというわけではなかったんですよね?

つのがい: そうなんです。でも今では、歴は短いですが結構コアなファンだと思っています!

田舎: そうですよね、絵を完全にコピーするという、すごく深いところまで追究していらっしゃいますもんね!

つのがい: 深いところまで追究できてると思いたいです(笑)

田舎: 本当に運命の出会いですよね。かなり大きく人生変わったんじゃないですか?

つのがい: 確かにそうです! すごく変わりました!(笑)

田舎: ですよね! 今やTwitterでも大人気の……。

つのがい: いえいえ! 僕は手塚先生のキャラクターを描いているだけですから! 言わば僕がやってる事って二次創作なので、オリジナルの漫画でSNSで賞賛を得られている方々には全く足元にも及ばないです。だから描いていて申し訳なくなってしまう時もあるんです。“隠れ蓑”じゃないですけど、やっぱり『ブラック・ジャック』のパロディを描いてるから見てもらえているという部分があると思いますので。

田舎: でも、キャラクターは手塚先生のキャラクターですけど、お話のネタはつのがい先生の完全オリジナルですもんね。本当にすごいです!

貧乏ネタは実体験を基に!?

田舎: ストーリーものではなくショートのギャグ作品なので、ネタ探しが大変そうだなって思うんですけど、どういうところから思いつくんですか?

つのがい: 以前は自分の周りにあった事を基にして描いてました。ブラック・ジャックが貧乏という設定だったり、フリーマーケットに行かせてみたり、実際に自分の身の回りにあった話が多いですね。

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

田舎: なるほど! つのがい先生自身の生活が投影されてるんですね。

つのがい: そうなんです。あとは、塾講師をしていた時代がありまして周りに生徒さんたちがたくさんいたので、そういうところでヤングな話題が自然に耳に入ってきたんですよね。いわゆるパリピとか若者系のネタが多いのは、生徒さんとの会話からの影響が大きいと思います。

田舎: 塾講師時代のことも漫画の役に立っているんですね! ご自身の周りであった事ということは、貧乏レシピシリーズもつのがい先生が考案して実際に作られたオリジナルレシピなんですか?

つのがい: そうなんですよ。ずっと一人暮らしをしていたので、どうせ食べるのは自分だけだし、「手間もお金もかからなくて、なんとなく味がついてて飲み込めれば何でもオッケー」という感じで料理(?)をしていました(笑)

田舎: “究極のオトコ飯”って感じですよね(笑)

つのがい: 描いちゃいけないレベルのものもあって、2巻で、「これはさすがに描かない方がよかったな」ってすごく後悔してるレシピがあって。ほとんど粉だけ、みたいな小麦粉の料理なんですけど……。

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

田舎: 覚えてます。僕も正直、「これだけは絶対に真似しないな」と思いましたね(笑)

つのがい: 僕も今は絶対食べたくないですもん(笑)これはやばいです。だって材料が、水と小麦粉とレタスと塩ですよ(笑)

田舎: 一応お好み焼きみたいなニュアンスなんですか?

つのがい: そうだと思います(笑)貧乏あるあるかもしれないですけど、調味料と小麦粉残りません?

田舎: わかります! 最初は一人暮らし始めてやる気満々で色々揃えちゃうんですよね。でも結局あんまり料理しないので、それらはほぼ新品のままずっと置いてるだけなんですよ。

つのがい: そうそう! 小麦粉とか片栗粉とか調味料とか。本当にお金がないときって、最後に残るのがそういうものだけになっちゃうんですよね。で、それらをかけ合わせて喉を通るものって、小麦粉を練って焼くぐらいしかないんですよ。

田舎: そうですよね(笑)もう最後の手段ですよね、小麦粉の塊を食べるっていう。

つのがい: これは本当に描いちゃいけなかったって思っているので3巻で謝ろうと思ってます(笑)

つのがい先生のお気に入りの回は?

田舎: ちなみに今まで描いたお話は全部覚えてるんですか?

つのがい: 覚えているには覚えているんですが……。こんな話があったなというのは覚えてるんですけど、それをもう漫画で描いているか、まだ自分のアイデアの段階なのかがわからなくなっちゃって、担当さんにネームを送って「これ前にも書いてます」って言われることもあります(笑)ひどい時なんかは、貧乏レシピも「これ過去に描いてますよ」って……(笑)

田舎: あはは! でも連載でも描いてるしTwitterにも載せてるし、これだけたくさん描いてたらわからなくなりますよね! たくさん描いてきた中で、お気に入りの回とかあるんですか?

つのがい: いくつもあります! 特に気に入っているのは、1巻だと「ただ尻の冷えるところを見せられるピノコ」と「みんなアゴにネコついてる」です。

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

田舎: 両方とも僕も大好きな回です!

つのがい: あと2巻の「インスタを荒らすユリさん」のシリーズが好きです。ユリさんがかわいく描けました。

田舎: 「インスタを荒らすユリさん」シリーズ、すごく面白いですよね! キリコの扱われ方がたまらないです(笑)

©︎手塚プロダクション/つのがい/小学館クリエイティブ

 

つのがい: ありがとうございます! 「みんなアゴにネコついてる」はいろいろな方からお褒めの言葉をいただきました。あと、過去にサイン会をやらせていただいた時に、「アゴのネコ」をプラ板で作って身につけて来てくださる方もいらっしゃって、描いてよかったなって思いました!

田舎: 「アゴのネコ」の熱狂的なファンの方がいらっしゃるんですね!(笑)

つのがい: そうなんです!(笑)しかも手塚先生のキャラクターじゃなくオリジナルキャラで唯一褒められたものなので、個人的にすごく好きです。

極限状態になるまで手塚先生の線を追い続ける

田舎: 先生の作品って絵も動きも描き文字まで全部、本当に手塚治虫先生のものとそっくりですよね。

つのがい: そう言っていただけると本当にすごく嬉しいです。基本はいつもすごく楽しく作業をしているんですが、描いているとやっぱり自分では自分が描いたものにしか見えないので、そういうときはとてもイライラして、怒りながら描いてます(笑)

田舎: 温厚なつのがい先生からはイライラしてる姿が全然想像できないです!

つのがい: 「こうじゃない!こうじゃない!」ってぶつぶつ言っています。でも時間も限られているので、限られた時間で今自分が描ける線はこの線だというところに収めなくてはいけない。そうするとやっぱりイライラしちゃいます。なので、似てると褒めていただけると本当に嬉しいですね。

田舎: めちゃくちゃ似てますよ! 2巻の「アトガキマンガ」で、「こうじゃないこうじゃない」って悩んでいる先生の姿が描かれてましたけど、本当にずっとあの状態なんですか?

つのがい: 基本はあの状態ですね……。でもアレは本当にやばいですよね(笑)狂気じみてますね(笑)

田舎: たしかにあのシーンは少し怖かったですね(笑) 個人的な感想になっちゃうんですけど、1巻の「アトガキマンガ」ですごく好きなページが二つあって。“暗く蒸し暑いワンルームで僕の机だけは光を放っていた”っていうのがすごくかっこいいページだなって思ったのと、“まるで恋をするようにその線を追いかけた”っていう表現がすごく好きなんですよ! だから2巻でも「アトガキマンガ」をすごく楽しみにして読んでみたら、めちゃくちゃ荒れている先生の姿が描かれていて「やっぱり色々大変なんだなー」って(笑)でもすごく迫力があって、リアルな部分が見れてすごく面白かったです!

 

つのがい: 今思えば、自分のことをこうも描くかねっていう(笑)すごい触れたくないシーンですよね。自分のことにフォーカスを当てた実録漫画はもう1巻で描いていたので2巻では描きたくなかったのですが、編集さんとの話し合いの末、描くことになって。でもその時はちょうど一番のスランプに陥っていた時で……。

田舎: いやいや、描いてくださって本当にありがとうございます! 読者としてはめちゃくちゃ知りたい部分ですよ。手にペンをぐるぐるに巻きつけて描いてるシーンとか、もうほんとにすごい迫力でした!

つのがい: あははは! 触れないでください!(笑)

漫画家・つのがい誕生秘話

波乱万丈の人生!つけペンとの運命の出会い

田舎: ちなみに漫画を描き始めたきっかけも改めて伺ってもよろしいですか?

つのがい: 元々はずっと学習塾の先生をやっていて、中学生や高校生に英語を教えていたんです。でもそこで不当な給料未払いなどいろんなことがありまして(笑)

田舎: 『#こんなブラック・ジャックはイヤだ』のアトガキマンガのコーナーにも描いてありましたね!

つのがい: そうです! さすがにこれじゃやっていけないなと思い学習塾の仕事を辞めて、次は工場に勤め始めたんですが、毎日家と工場を行き来するだけの生活だったので何か趣味を持ちたいなと思っていて。ある日、暑かったので涼しもうと思って家の近くの文房具屋さんに入ったら、そこにつけペンなどの漫画用品のコーナーがあったんですよ。で、「あ、これ、プロのやつだ!かっこいい!」って思って。

田舎: あはは(笑)

つのがい: 漫画は全然読む方ではなかったんですが、それでも素人感覚でわかるじゃないですか、これはプロの道具だ、って。

田舎: そうですよね。僕もつけペンとか見る度に、かっこいいなって思います!

つのがい: そのときに、自分が小さい頃は絵を描くのが好きだったとよく親から言われていたのを思い出して、今でも何か描けるかなと思って、なけなしのお金をはたいて買ってみたんです。それがきっかけです。

田舎: なるほど! 文房具屋でつけペンと出会ったことがすべての始まりだったんですね! でもそのときは漫画を仕事にしようと思っていたわけではないんですよね?

つのがい: そうですね。あくまでも趣味を何か持とうと思っていただけでした。

田舎: プロを目指していたわけではなかった中、あえてつけペンを選ばれた理由などはありますか?

つのがい: その時ちょうど目に付いたのが偶然つけペンだったんだと思います。多分周りには他にも絵の具とか色々あったと思うんですけど……。つけペンって、カスタムと言うか、自分でペン先を付け替えたりするじゃないですか。あれがかっこいいなって(笑)

田舎: すごくわかります! 男心をくすぐられますよね(笑)

 

▶︎Page.2:水だけの生活からデビューに至るまでのサクセスストーリーは次ページ

 

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