『風の大地』のゴルフ修行僧 沖田圭介が背負ったハンデ一覧

『風の大地』のゴルフ修行僧 沖田圭介が背負ったハンデ一覧
     

サブカルクソ研究者。
英文学・言語学・メディア記号論を専攻。
新聞社を退職後、翻訳補助を通じて総合文化研究に携わるも、中の人がどオタクであった為に、研究対象は漫画、アニメ、ゲーム等に限られる。Twitter→@semiotics_labo

   

 

プロゴルファーにして漫画原作者という異色の経歴を持つ、坂田信弘のゴルフ哲学が詰まった人気長編ゴルフ漫画、『風の大地』。

遅咲きだった坂田氏の分身である主人公・沖田圭介は、24歳で鹿沼カントリークラブの研修生となると、25歳になる前にプロテストに一発合格。

 

「エーイ、クソボールめ! 死ねーッ!!」

引用:坂田信弘/小学館『風の大地』1巻 38頁

 

と感情を剥き出しにし、奥歯を砕いたり打球を割いたり、蟻1匹を殺すか殺さないかで涙したりしていたのは今は昔で、

 

「宇賀神さんの形見のドライバーで、俺は生きてゆく!」

引用:坂田信弘/小学館『風の大地』4巻 228頁

 

と固く誓った後、感情を表に出さず己の心の内と対話する修行僧となり、並みいる世界の強豪を寄せ付けぬ強さを発揮していきます。

何せキャリーで400ヤードを飛ばし、アプローチをダイレクトチップインさせるようなあまりに強すぎる実力の持ち主で、大会に出場すれば2位に10打差以上を付けて優勝してしまいますから、作者によってあらゆる困難が与えられ、ハンデを背負いながら戦うのがこの漫画の様式美となっております。

スポーツ漫画では接戦を演出する為、『キャプテン翼』で若林くんを足の怪我で欠場させたり、『エースをねらえ』でダブルスを組む竜崎麗香(お蝶夫人)に交通事故で腕に怪我を負わせたりと、主要キャラの実力を弱体化させるのが常道手段です。

果たして『風の大地』ではどのような手段で主人公を苦しめてきたのでしょうか。
今回は、沖田が背負った過酷なハンデをご紹介していきましょう。

沖田圭介の重すぎるハンデ一覧

全英オープン

引用元:Comee.net

沖田圭介が最初にハンデを背負って戦ったのは15巻、全英オープン3日目。
豪雨となった第1ホールで、一緒にラウンドしていた日本人の河内俊一郎利き腕の右手甲をゴルフクラブで叩かれ、重度の打撲を負いながら18ホールを回ります。

ゴルフの聖地を汚す行為に及んだ河内は普通なら即失格、同時に大会出場資格を永久に失うはずですが、そこは修行僧である沖田の忍耐が勝り、ノーペナルティで大目に見ると、何とこの状態からもスコアを3つ縮め、9アンダーで単独2位に浮上します。

※ 2日目はイーブンから6つ縮めています。

全英オープン 成績
1日目  0 (16Hで10打を叩き-6から後退)
2日目  -6
3日目  -9
4日目 -19

最終4日目では19アンダーまで伸ばし、首位のグレッグ・ノーマンと接戦を繰り広げ1打差の2位で終えますが、利き腕の怪我が無ければ3日目で余裕で首位に並んでいたでしょうし、最終日はそこから更に突き放して優勝していた計算ですね。
日本人初の全英オープン制覇の夢は幻となりました。

なお全英終了後、沖田のキャディを務めたリリィ・マクガン不意の交通事故で死亡し、沖田の悟り開眼にますます拍車が掛かります。

全米プロ

引用元:Comee.net

続いて20巻、全米プロゴルフ選手権ではのっけからリリィの死を引きずる展開で、インパクトの型が作れず、ボールが曲がりすぎる「棒の体」に陥ってスコアを崩します。
初日を何とかイーブンパーで乗り切るも、この時点で首位とは7打差が付いていました。

さらには2日目に、今度はキャディの男の子が落雷に打たれて病院送りになるアクシデントに見舞われ、11番ホールで雷雨サスペンデッド。
神が与えた試練の真っ只中に居る沖田に関わるとろくな事がありません。

再開後は伝説のサックス奏者、グレゴリー・オースティンにキャディが交代し、4アンダーで予選突破すると、ここからついに沖田が本領発揮します。

全米プロ 成績
1日目  0
2日目  -4
3日目  -9
4日目 -12

3日目では、池に落ちる手前のラフからバックスピンで戻してチップインイーグルを取り、首位と1打差の9アンダーまで猛チャージすると、4日目は終生のライバル、シルバー・スコット・ウォーレンと最後まで首位を争い、17番ホールの時点で16アンダーの単独トップに。

しかし最終18番では、ピンデッドに狙った沖田の球が2度も旗に弾かれウォーターハザードに、ウォーレンも3パットを叩いて別の選手が逆転優勝します。
『風の大地』では、最終日をトップでラウンドする選手にとんでもない不運が降りかかるのも、接戦を演出する重要な要素になっており、これも沖田が招き寄せる見えざる力のせいなのです。

マスターズ

鹿沼に戻ってきた沖田は、酔っ払いに絡まれたり、悪徳国会議員から賭けゴルフを持ちかけられたりしましたが、そんな事は試練のうちに入りませんでした。

引用元:Comee.net

 

29巻、研修生時代の先輩・笠崎孝と夜道を帰宅途中に、運転を誤った車が衝突。
笠崎にかばわれた沖田は左足首を剥離骨折し全治2か月、笠崎は両膝に選手生命が危ぶまれるほどの重症を負いリハビリに1年を要しました。

そんな状態から復帰後初戦のドバイデザートクラシックでは、最終日17番ホールで左足に違和感を覚えながらも、新たなライバル・神の子アベル・コスタを8打差で退けトータル30アンダーで優勝。

違和感程度では、修行を続けてきた沖田のゴルフは止められません。

帰国後、左足のリハビリに6ヶ月から1年かかると診断されますが、2か月後に開催されるマスターズトーナメントに照準を合わせ、ドバイで折れた宇賀神さんの形見の代わりとなるニュークラブを引っ提げ強行出場します。

マスターズ 成績
1日目  -5
2日目  -5(激しい雨と強風で上位陣総崩れ)
3日目 -12
4日目 -20

マスターズ3日目、16番ホールでヘッド軌道に歪みが生じたの皮切りに、4日目の朝から左足の状態は悪くなり、13番で450ヤードのビッグショットを打った直後からとうとう痛みが出るようになった為、スタンスを閉じて足に負担をかけない打ち方を選択し、ドライバーの飛距離を50ヤード落とすハンデを背負う事に。

もっとも、さっき450ヤード飛ばした人から50ヤードを差し引いた所で、どっちにしろ飛距離が常人離れしている事に変わりはありませんがね。
マスターズ編のライバル・オーウェン兄弟とはこれでようやく接戦になる程度。

迎えた最終18番、庇い続けていた左足の靭帯を断裂、骨膜も一緒に剥がれ、スコアを崩したオーウェン兄に競り勝ったものの、宿敵ウォーレンとのプレーオフを棄権する事ととなり、長きに渡った戦いは全英に引き続き2位で幕を閉じました。

交通事故にさえ遭ってなかったら、ぶっちぎりの優勝だったでしょうに……。

全米オープン

マスターズ終了後も相変わらず、骨膜剥離した足で川で溺れた女性を助けてリハビリ期間が伸びた沖田でしたが、帰国後のサン・クロレラクラシックでは470ヤードを打ち、2位と24打差(世界新記録)の28アンダーで優勝。

引用元:Comee.net

52巻で代わりにハンデを背負ったのは、プロテストに挑んだ親友・笠崎でした。
後続の打った球が胸を直撃し胸部筋断裂、18番ホールを片手一本で回って何とか合格するも、怪我を心配して笠崎に付き添った同伴競技者の2人が、鹿沼に恨みを持つ悪徳国会議員の告発によって不当な遅延プレーと見做され、審査がやり直しに。
笠崎は自らの合格取り消しと引き換えに再審査を中止させ、ゴルフの夢を捨てて出家し永平寺の見習い僧になりました。

沖田は目標としていた全米オープンで、カメラマンが「感情が目に表れていた」と証言したほど、プロ入りを断念した笠崎への悲しみを抱えいつもの自制心を失っていた為に、プレーオフに敗れてまたしてもメジャー制覇ならず。
競技経過はダイジェストで描かれましたが、400ヤード超えする時の沖田は「無心で打てた」と語っているので、4日間のラウンドでそのような状態にはならなかったのでしょう。

怪我の影響でその年の全英出場を辞退しますが、夜の公園で婚約者の物部麗子さんと2人っきりで居る時に、例の国会議員が糸を引いたチンピラ3人組に絡まれ、これを撃退すると、今度は沖田が所属する鹿沼CCが嫌がらせを受けたり、麗子さんの実家の神社が放火されたりと、沖田の自制心は乱されっ放しです。

周囲の人々を苦しめる事で沖田の能力を弱体化する手法は、これ以降も続けて発生し、『風の大地』の定番ネタとなっていきます。

オーストラリアオープン

引用元:Comee.net

日本を離れ、復帰の第一戦をオーストラリアオープンに照準を定めた沖田。
ですがここでもひと悶着が起こってしまいます。

61巻、沖田のあずかり知らぬ所でマフィアの賭けゴルフに巻き込まれ、最終日15番ホール、記者として大会に帯同していた婚約者の麗子さんが裏社会を仕切るブックメーカーの男によって誘拐、沖田は優勝を放棄するよう脅迫を受けます。

こうまでして沖田から自制心を奪おうというのでしょうか。
怒りの形相でラウンドに戻ると、ひと呼吸を置いてから麗子さんを救うべく八百長への加担を決意、17番ホールでは宇賀神さんを思い出して涙を流し、もはや沖田の無心のゴルフはそこにはありません。

オーストラリアオープン 成績
1日目  -6
2日目 -10
3日目 -17
4日目 -26

しかしすんでの所でマフィアの誘拐現場を押さえた地元のテレビ局が映像を中継し、マフィアに計画の失敗を告げると、麗子さんは無事に救出され、18番で打った沖田の故意のミスショットも、麗子さんの静止の声のおかげで奇跡的に壁に跳ね返って2オンに成功。

裏社会から解放された沖田は、そのままトータル26アンダーで優勝しました。
2位に12打差を付けてのコースレコードでした。

その後、沖田と麗子さんはハッサン国王2世杯が開催されるモロッコの地で結婚。
オーストラリアから続く心のざわつきと戦いながらもこの大会を圧勝し、メンタル面でのハンデは完全に克服したかに思えましたが……。

全英オープン(2回目)

引用元:Comee.net

鹿沼の宿所から宇都宮に引っ越し、麗子さんとの新婚生活が始まった64巻。
ここで誰もが予想をしていなかった事が起こります。

自転車で鹿沼まで通う途中、坂道を上る沖田を毎日応援してくれていた小学生5人が居眠り運転で蛇行したトラックに轢かれ全員死亡
トラックの下から救助するも失われた命は戻ってこず、「あそこで声を掛けなかったら、事故に遭わなかったのだッ」と、子供達の7回忌が済むまでトーナメント参加を辞退し、27歳と5か月の時から7年が経過しました。

25歳からプロになって2年半、そこからいきなり7年飛ぶ超展開です。

34歳になった沖田は、事故に遭った子供達の家族に促され現役に復帰、2度目となる全英オープンへ向け最終予選会への参加を決めます。
そこでリリィ・マクガンの妹が登場して沖田の心を揺さぶったり、本戦1日目でドライバーがまたしても折れてしまったり、2日目でキャディが交代してしまったりと、次から次に試練が襲い掛かってきています。

果たしてこの先、沖田にどんなハンデが背負わされるのか。
それとも悲願のメジャー初制覇なるのか。

今後の『風の大地』に注目です。

まとめ

『風の大地』の沖田圭介が背負ったハンデ一覧、いかがだったでしょうか。

全英オープンでは、右手甲の打撲とキャディの事故死。
全米プロでは、落雷によるキャディ交代。
マスターズでは、左足首の剥離骨折→骨膜剥離。
全米オープンでは、親友のプロテスト合格取り消し。
オーストラリアオープンでは、婚約者の誘拐。

およそ2年の間にこれだけのイベントが発生した後、とどめに子供達5人を交通事故で死なせる坂田氏のストーリーテリングに、長年慣らされた読者も驚きの連続です。

ちなみに、同じく坂田氏が原作の陸上競技漫画『奈緒子』でも、主人公の壱岐雄介をはじめ波切島高校陸上部の人達が凄まじいハンデを背負わされてます。

男体山が猿岩になったぐらいで、面白さは『風の大地』と変わらずお勧めしたい作品ですので、こちらも是非合わせて読んでみて下さい。

 

 

栃木県鹿沼カントリークラブの研修生、沖田圭介は、24歳と、年齢的には遅いスタートながら、プロゴルファーを目指すべく日々練習に明けくれている。だが、沖田はまったくの素人であるため、まだ上手に球を打つことができない。

引用元:Comee.net

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