今回は実写ドラマ化が決まった『ラジエーションハウス』の作者、モリタイシ先生にお話を伺ってきました!
日常生活ではあまり耳馴染みの無い放射線科を題材にした『ラジエーションハウス』。
たくさんの方に知ってもらいたい乳がんに関する真面目な話や、魅力的なキャラクターの背景など色々とお話しを伺うことができました。
また、並行連載中の『あそこではたらくムスブさん』についても知られざるモデルの話など盛りだくさんの内容となっております。
そして! 今回も読者プレゼント企画をさせて頂けることになりました!
応募方法は記事の最後にありますので、最後まで是非ご一読を!
【プロフィール情報】
モリタイシ
2000年、『週刊少年サンデー超』誌にて『招福祈願ダルマイト・ガイ』でデビュー。
代表作に『週刊少年誌サンデー』誌上で人気を博した『いでじゅう』がある。
本名が読み間違えられる事が多いのでペンネームは本名をカタカナにしたもの。
現在は『グランドジャンプ』誌で『ラジエーションハウス』、『ゲッサン』誌で『あそこではたらくムスブさん』の2本を連載中。
『ラジエーションハウス』について
祝!『ラジエーションハウス』実写ドラマ化決定!
河野: 今日は実写ドラマ化が決まった『ラジエーションハウス』の話をメインに、『あそこではたらくムスブさん』の話などもお聞かせいただければと思っております。よろしくお願いします。
モリ: よろしくお願いします。
河野: まずは『ラジエーションハウス』実写ドラマ化決定おめでとうございます! 今の心境はどうでしょう?
モリ: ありがとうございます! いやぁ、それはやっぱり嬉しいですよ! Twitterで実写化の報告もさせてもらったんですが、普段告知系のツイートってあんまり反応がないことが多いんですけど、実写化のツイートは本当に沢山の方から反響がありまして。
河野: それだけ楽しみにしてくれている方が沢山いたんですね。
モリ: ありがたいですね。『ラジエーションハウス』を描くにあたって放射線技師の方や放射線科医の方、他にも色んな人達に協力していただいておりまして。そういった方々の仕事を知ってもらえるのは嬉しいですね。僕自身『ラジエーションハウス』を描くまでは放射線技師、放射線科医とはどんな仕事なのか詳しくは知らなかったんです。
河野: 僕も正直『ラジエーションハウス』を読むまでは全く知らなかったです。
モリ: 「レントゲンを撮ってくれる人」っていうのはなんとなくわかるじゃないですか。でもレントゲンを撮るのも色々とやり方があって、そのレントゲンを診断する人がいて、僕らの所に伝わるまでにこんなに色んな人が関わっているんだよっていうのを知ってもらえるキッカケになればいいなと思っています。
河野: 本当にそうですね。もともとモリ先生も近い存在ではなかった世界とのことでしたが、『ラジエーションハウス』を描くに至った経緯を聞いてもいいですか?
モリ: 結構色々ありましたねぇ(笑)ザックリと言うと、編集さんからこの『ラジエーションハウス』の企画のお話を頂きました。以前原作付きの漫画は描いたことがあったので、元々は次も原作付きっていうのは少し抵抗があったんです。次はオリジナルを描きたいと考えていたのもありまして。でもお話を詳しく聞いたら凄く面白そうだったので「是非やらせてください」ってなりましたね。
河野: なるほど。
モリ: 原作者の横幕先生が本当に優しい方でもの凄く素敵な方なんです。ストーリーは横幕先生がしっかり考えてくれている分、キャラクターは割と自由に描かせてもらっていますね。漫画を描く上で、僕はキャラクターを描くのが一番好きな作業なんです。今までの僕の漫画はキャラクターありきでストーリーを作っていた事も多いんですけど、今回はストーリーありきでキャラクターを動かしています。
河野: 今までと逆の作り方なんですね。
モリ: そうですね。描いていて凄く勉強にもなります。しっかりとしたストーリーが枠としてある分、その枠の中で好きにキャラクターを動かせるので楽しく描かせてもらっていますね。
河野: ストーリーもさることながら、キャラクターがみんな魅力的だなと思っていたので横幕先生とモリ先生のお互いの良い部分が作品になっているんですね。
医療漫画を描く上での知られざる苦労
河野: ラブコメ要素も読者の楽しみの1つだと思うのですが、ラブストーリーはお二人で作られているのですか?
モリ: ラブストーリーに関しては「こういう展開にしていこうと思います」って言うのを伝えさせてはもらっていますが、基本的には僕に任せてもらっていますね。担当編集さんも僕もラブコメを膨らませるのが好きなんですよ。なので、原作の文章で3行くらいしか触れていないラブコメ部分を3話分にかけて描いてみたり(笑)
河野: 医療のシリアスな部分とラブコメのほんわかする部分のバランスが凄く良いですよね。
モリ: ストーリーとして真面目にしっかりと伝えたい部分とラブコメだったりちょっとしたギャグだったりする部分の描きわけは意識していますね。
河野: そうなんですね。『ラジエーションハウス』は医療モノですが、やっぱり描くのは苦労されますか?
モリ: 苦労はありますね。僕が今まで描いてきた漫画って一部屋の中で完結するような小規模な話が多いんですよ。なので職業モノや入念な取材が必要な漫画は出来れば避けて通りたかったくらいで(笑)でもいざ描いてみると、漫画家として自分のためになっているなっていう実感はあります。
河野: どの様な部分が特に苦労されますか?
モリ: 絵の苦労ももちろんありますけど、僕自身医療に関しては素人なので、いかに読者さんにわかりやすく説明するかですね。例えば医療用語を作中で説明する時に、自分が理解していないと読者さんに伝えることが出来ないんですよ。なので自分の中でキチンと理解した上で、なおかつ読者さんに伝わりやすい言い回しに変えたりっていう工夫はしています。
河野: すごくわかりやすく描かれているなと思っていました。モリ先生は取材などには行かれるんですか?
モリ: 僕は描きながらなのでなかなか全ての取材には同行できないんですよ。時間の許す限り行っていますが、実際には原作の横幕先生と担当編集さんが取材に行ってくれることが多いです。
河野: 巻末漫画で描かれていましたが胸を圧迫するマンモグラフィ検査は先生も取材に行かれてましたよね?
モリ: そうですね。当時は今よりは少し時間的余裕があったのであの取材は行かせてもらいました。
河野: 実際にマンモグラフィ検査を体験してみてどうでした?
モリ: めちゃくちゃ痛かったです!(笑) 実際に検査でやる半分の力でギブアップしてしまいました。痛かったですけど自分で体験できたのはいい経験になりました。もう少し時間を上手く使えるようになればもっと取材にも同行したいんですけども。
河野: 実際に自分自身でも体験などをされてから描くって、すごく大変なことでしょうし素晴らしい姿勢だと思います。絵に関してだと、医療機器を描くのって大変ですよね?
モリ: 大変ですね……(笑) 自分で取材に行った時は自分で写真を撮って、行けなかった時は担当さんに写真を撮ってきてもらうんですが、出来ればトレースで済ませたいんですよ。でもアングルがちょうど良い写真が無かったらトレースする訳にもいかなくて、自分で角度を決めて描かなきゃいけないので大変です。
河野: お話を聞いただけでもめちゃくちゃ大変な作業だろうというのが伝わります(笑)
もっと広まって欲しい乳がんについての想い
河野: モリ先生は元々医療漫画に興味はありましたか?
モリ: 正直最初はそこまでは無かったですね。『ラジエーションハウス』を描こうと思ったのは原作が面白かったからっていうのが前提としてあるんですけど、自分の知らない分野の事を描くことも必要だなという思いもあったんです。今まで描いてきた漫画は自分の人生で得たものの範囲内でしかやってこなかったので、そうするとやっぱり描ける事が狭いじゃないですか。
河野: たしかに経験したことの範囲内だけで描いていると知らない世界のことは描けないですもんね。
モリ: 知らないことを吸収して描いていければ自分の知識にもなりますし、漫画家として今後の糧になるなと思いまして。自分の体験とセンスだけでいつまでも描けるほど器用なタイプではないと思うので(笑)
河野: 挑戦でもある訳ですね。そうすると描き始めてからになると思うのですが、啓蒙として描いている意識はありますか?
モリ: 描き始めてからはやっぱりありますね。特に乳がんのエピソードは実際に取材に行った時の体験を基に描いているんです。あるシンポジウムに取材に行かせてもらって、乳がんになってしまい、片胸を切除して、そこからも検診は続けていたのにまた乳がんになってしまった方の訴えを聞いたんです。それを目の当たりにした時の女性としてのやるせなさやつらさが凄く伝わってきて。その方は作中にも出てくるような「デンスブレスト」の方だったんですね。アジア人は「デンスブレスト」の人がかなり多いらしく「マンモグラフィ検査」だけでは発見できない例もあるみたいなので、これはたくさんの人に知ってもらいたい知識だと思いまして、原作の横幕先生と相談して症例としてはほぼそのままエピソードとして描かせてもらいました。
河野: 「デンスブレスト」って僕も読むまでは聞いたこともない単語だったので、非常にためになりました。女性だけでなく僕ら男性も知っておいた方がいい事ですよね。
モリ: そうですね。乳がんは世の中の関心の高い話題だと思うので、色んな例があるんだよって事を知ってもらいたいですね。
河野: 知識として知っておくだけで選択肢が増えますもんね。
魅力的なキャラクター達の設定
河野: キャラクターの話も聞かせて欲しいんですけど、杏ちゃん可愛いですね!
モリ: ありがとうございます(笑) 杏は今までの僕では描かないタイプのヒロインなんです。最初めちゃくちゃツンツンしてるじゃないですか。なので序盤は、杏は読者さんから嫌われてしまったみたいで(笑)
河野: そうなんですか!?(笑) でもツンツン系のヒロインが最初嫌われてしまうのはしょうがないかもしれないですね。
モリ: 僕の漫画にしては珍しく、主人公の唯織が人気があるんですよ。なので唯織にツンツンする杏が嫌われてしまったんですね。「唯織きゅんをいじめるな!」みたいな。 主人公が人気があるのは僕としては嬉しいですね。
河野: なるほど!(笑) たしかに唯織好きからは嫌われちゃいそうですね! でも回を重ねるごとに徐々に心を許していく訳ですもんね。唯織は設定としてイケメンなんですか?
モリ: んー、凄くイケメンって訳ではないですかね。ちょっと爬虫類チックな顔をしているので、好きな人は好きなタイプの顔だと思います。作中でも看護師の女の子は「カッコイイ」って言ってますし。最初はもう少しキモい要素を入れていたつもりなんですけど、最近の唯織はただただカッコよくなっちゃってますね(笑)
河野: 初期はキモい要素が入っていたんですね(笑) 裕乃も凄く良いキャラですよね!
モリ: ビジュアル的には僕は裕乃を好んで描いています(笑)
河野: 僕はビジュアルは杏ちゃん派ですけど、キャラ的には裕乃が好きです(笑) 裕乃がいることによって凄く漫画が読みやすくなるというか。ちょっとお馬鹿キャラですし、読者のわからない部分を代弁して聞いてくれますよね。
モリ: そうですね。裕乃は読者目線に近いキャラだと思います。ただ、1話目2話目であまりにも馬鹿すぎるっていうことで読者の方から少しお叱りも受けました(笑)
河野: え!そうなんですか!
モリ: 「アーチファクト」っていう金属のせいで脳がMRIに正常に映らない描写があるんですけど、裕乃は「脳が溶けてる!」って驚いちゃうっていう(笑)「この子はどうやって国家試験合格したんだよ!」ってツッコミがたくさんあったんですけど、そこは漫画なので見逃してください!(笑)
河野: あはは!(笑) でも僕みたいな何も知らない読者からすると「脳が溶けてる!」って思っちゃうかもしれないのでありがたいキャラですね(笑) 裕乃の馬鹿さのおかげでその後の「アーチファクト」の説明もスムーズにいきますもんね。
モリ: そう言った意味では重宝しています(笑) 裕乃も人気キャラですね。
河野: 唯織たちだけでなく、他のサブキャラクターも話の中でどんどんと内面が掘り下げられていっていますよね。まだスポットの当たっていないキャラもこれから掘り下げられるんでしょうか?
モリ: そうですね。他のサブキャラクターもこれからメインになるエピソードがあると思います。
河野: 楽しみです!
▶︎Page.2:あのヒロインにはモデルがいた!? 『あそこではたらくムスブさん』に関する情報は次ページで!