真実は一つじゃない 人の数だけ真実がある『ミステリと言う勿れ』のメタミステリ構造

真実は一つじゃない 人の数だけ真実がある『ミステリと言う勿れ』のメタミステリ構造
     

サブカルクソ研究者。
英文学・言語学・メディア記号論を専攻。
新聞社を退職後、翻訳補助を通じて総合文化研究に携わるも、中の人がどオタクであった為に、研究対象は漫画、アニメ、ゲーム等に限られる。Twitter→@semiotics_labo

   

 

引用元:Comee.net

2019年話題の漫画、『ミステリと言う勿(なか)れ』。
このマンガがすごい!2019 オンナ編ランキング2位に続き、マンガ大賞2019でも二次ノミネートされた、漫画好きなら手に取っておきたい作品です。

この漫画の特徴は、『名探偵コナン』に代表される正義の執行者としての探偵役のメタ構造を取っている点が挙げられます。

ゆえに、ミステリと言ってはいけない、ミステリとは言わないでという意味の題が付いているんじゃないかと思っておりますが、さてはて、真実はどうなのか?
田村由美の最新作『ミステリと言う勿れ』の見所をご紹介していきましょう。

『ミステリと言う勿れ』のご紹介

名探偵コナンとは正反対

引用元:Comee.net

 

『名探偵コナン』は、言わずと知れた推理漫画の金字塔です。

黒の組織に薬を飲まされ子供の姿にされた高校生探偵が、明晰な頭脳と「真実はいつも一つ!」の決め台詞を引っ提げ、事件の犯人を追い詰めていくお話ですね。

冤罪で逮捕された『ミステリと言う勿れ』の主人公・久能 整(くのう ととのう)は、

 

ええ?えええ?
真実は一つなんて、そんなドラマみたいなセリフをほんとに言う人がいるなんて。

田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』1巻 41頁

 

真実は一つじゃない、2つや3つでもない、真実は人の数だけあるんですよ。

田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』1巻 44頁

 

と、のっけからコナン君の決め台詞を覆し、読者と警察を煙に巻きます。
そしてepisode1のラストで事件の「真実」が明らかになり、正義とは何か?という問いかけを事件に関わった人達の心の内に残して、飄々と警察署を後にします。

取調室に居ながら事件を解決する、いわゆる安楽椅子探偵物かな?

と最初は思ったのですが、どうやらこれは『名探偵コナン』などの、真実を追求し、正義の執行を行うミステリ物の探偵役に、

 

その真実は本当に正しいのか?

犯人には犯人だけが持つ真実があるのではないのか?

 

とセルフツッコミを入れる、メタミステリの構造を持った作品ではないかと思いました。

 

それがよく表れているのが、episode2冒頭の台詞。

 

僕はただの学生で、探偵でもその助手でもないですよ。
刑事でも検事でもないし、検視官でも科捜研でもないし、弁護士でもルポライターでも作家でもカメラマンでも、大学教授でも陰陽師でもプロファイラーでも家政婦さんでも、塀の中の有名な殺人鬼でもないんですよ。

田村由美/小学館『ミステリと言う勿れ』1巻 96頁

 

相棒、科捜研の女、浅見光彦、家政婦は見た、などなど有名推理ドラマの主人公を指して、自分はここに挙げた人物とは違いますと、はっきりそう言っている。

つまりミステリ物の探偵役なんかじゃない、ミステリと言う勿れ、となるでしょうか。

会話劇に放り込まれたツッコミ役

episode2を読み進めていくと、主人公の整(ととのう)くんが探偵役となって推理する際に、他の探偵役とは異なる手法で事件を解決に導いているのが分かります。

この回は密室空間での会話劇を中心に進んでいきます。

 

 

会話劇というのは、登場人物の表層部分を切り取って台詞に載せ、会話に潜ませた断片的な本心=深層部分を読者に汲み取らせるように創作された劇の事です。

推理小説の場合、表層的な会話から深層部分を拾うのは探偵の役割となります。
断片的な情報を1本の線に繋ぎ合わせ、追い詰められた犯人が最後に深層部分となる犯行の動機を自白する事で、事件は解決します。

 

引用元:Comee.net

ところが『ミステリと言う勿れ』では、登場人物の会話に探偵役の整くんが毎回割って入り、そのまま独りでべらべら喋り始めます。

それはもう毎回です。
ページが吹き出しで埋まるほどです。

会話を遮らずに思索に耽るハードボイルドな探偵物ではちょっとあり得ない光景ですが、この漫画ではむしろ真骨頂で、整くんはその場に居合わせた全員の、事件とは全く関係ない本心にまで切り込み、それを平等にテーブルの上に並べようとしています。

 

なぜこんな回りくどいだけの会話劇をねじ込んでいるのか?
と思わせた時点で筆者の負け、

 

最後に登場人物全員を巻き込んだ、

犯人側の真実

を炙り出し、どんでん返しを行う為だったのです。

 

その瞬間に、事件とは全く関係なかったはずの人達の深層部分に焦点が当たり、切られた推理のカードがシャッフルされます。

まさに「真実は人の数だけある」、という訳です。

 

引用元:Comee.net

 

episode3、4でも、登場人物の数だけ「真実」が用意されています。

一見関係なさそうなフリにツッコミを入れる事でオチに上手く繋げていく手法は、推理小説よりも漫才の会話劇のようであり、整くんは言うなれば探偵役を兼ねたツッコミ役です。

登場人物の内側に踏み込んでは、核心をずばりと突く話術は痛快そのもの。
叙述トリックより主人公の喋りが面白いのもこの漫画の特徴で、推理そっちのけで楽しめるのではないかと思います。

まとめ

『ミステリと言う勿れ』のご紹介、いかがでしたか?

ミステリ物の探偵役が追求する真実に、本当にそうなんでしょうか? と待ったをかける口達者な主人公・久能整は、ミステリというジャンル自体のメタ構造を持った、新しいタイプの探偵役です。

構造論から見ても面白いのは間違いありませんが、そんな事より主人公を見てくれ。
への字口のまま相手をやり込める整くんの活躍に今後も期待です。

 

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引用元:Comee.net

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