【インタビュー】「このマンガがすごい!2019」(宝島社)オトコ編2位!今をときめく『金剛寺さんは面倒臭い』の作者とよ田みのる先生に直撃インタビュー!

【インタビュー】「このマンガがすごい!2019」(宝島社)オトコ編2位!今をときめく『金剛寺さんは面倒臭い』の作者とよ田みのる先生に直撃インタビュー!
     

よしもと漫画研究部部長。
漫画、映画、ボードゲームをこよなく愛する帰国子女。
いつか漫画に囲まれた部屋に住んで漫画の風呂入って漫画で歯を磨きたいです。

   

こんにちは! 吉川きっちょむです。

今回は「このマンガがすごい!2019」(宝島社)オトコ編2位も受賞した『ゲッサン』にて大絶賛連載中の『金剛寺さんは面倒臭い』の作者、とよ田みのる先生にお話を聞いてきました!

まさかの誕生秘話から元ネタの紹介、伏線回収まで漫画ファン必見のインタビューとなっています!!

 

とよ田みのる
2002年に『月刊アフタヌーン』(講談社)掲載の「ラブロマ」でデビュー。
翌2003年に同誌で連載化した同作で連載デビューし、代表作となった。

『ゲッサン』(小学館)誌上において『金剛寺さんは面倒臭い』を連載中。

『金剛寺さんは面倒臭い』について

吉川: 漫画大好き芸人として、よしもと漫画研究部部長をやっています、吉川きっちょむと申します。今回はインタビューよろしくお願いします。

とよ田: よろしくお願いします。

吉川: 今回、とよ田先生にインタビューできるという話になってぜひ僕にやらせてくださいと飛びついて編集長にお願いしたんです!(笑) 最初にとよ田先生を知った『友達100人できるかな』で、もうすっかり世界観に夢中になってしまって……! その後に『とよ田みのる短編集 CATCH&THROW』や『タケヲちゃん物怪録』、『最近の赤さん』、そして連載中の『金剛寺さんは面倒臭い』までずっと追って来ていたのでもう興奮しちゃって! 実はコミティアにも行って自主制作本も購入したのですが、常に先生の周りに人だかりがあったのと緊張とで話しかけられませんでした。

とよ田: そうだったんですね、ありがとうございます。

紆余曲折あって死にかけてた連載開始前

吉川: 今回は連載中の『金剛寺さんは面倒臭い』のお話を中心にお聞きしていきたいのですが、『金剛寺さんは面倒臭い』はゲッサンに掲載された読み切りから始まって、劇画狼さんのサイト「エクストリームマンガ学園」で再掲載されて話題になったことがきっかけで連載化へという流れだったんでしょうか?

とよ田: そうですね、実はその時は違う連載を企画している途中だったんですけど、劇画狼さんが「短編集を出さないのはもったいない」と声をかけてきてくれて。短編集に載せるだけのページ数は溜まっていたので『金剛寺さんは面倒臭い』の読み切りを載せることでそういう動きになればいいなとは考えていました。劇画狼さんは自分には何も得にならないようなことでもただ自分の好きな漫画紹介したいからってすごい一生懸命やってくれるんですよ。イチ漫画好きとして応援したいという感じで。

吉川: その行動力って本当にすごい漫画愛があるからですよね。

とよ田: いいサイコパスなんですよ(笑)

吉川: はは! いい表現ですね(笑)そこから話題になってという感じですか?

とよ田: 最初は前の担当さんから提案された別の企画を半年くらい準備してやっていたんですけど、自分でダメだと思っちゃって。悪くはなかったんですけど、今まで通りというか、これをやっても壁を超えられないような気がしちゃって。

吉川: その企画はどういう内容だったんですか?

とよ田: 冒険モノですね。担当さんに「これからは少年が冒険する分かりやすいものがいいんですよ!」って言われて、「どこを冒険したらいいですか?」って聞いたら「ジャングルか深海です!」って言われて。わー、二択かーって思って(笑)

吉川: ははは!

とよ田: 少し悩んで、「じゃ、じゃあ深海で……!」と。そこから深海の資料とかを集めて半年間くらい勉強して、ネームも3話分くらい作ったんですよ。それで編集さんからOKをいただいて、編集長さんも「連載しましょう」って言ってくれて、新連載の予告カットも描いてたんだけど、改めて見直したら……「やっぱり嫌だなー」って思って……。

吉川: ……ということはご自分でボツにしたってことですか?

とよ田: そうそうそう。

吉川: えー!

とよ田: ちょうど年末で、年が明けたらもう連載の予告を刷る予定だったので予告カットも渡してあったんですけど、12月27、28日あたりに「やっぱダメだ、このままじゃ年を越せない」と思って担当さんに電話して編集長と3人で集まって、正式に「やめさせてください」と言って断りました。

吉川: 普通はなかなかできない決断をされましたね。

とよ田: しかも小学館さんが年末の仕事納めの年の瀬に(笑)

吉川: でも予告カットが載る前でよかったですよね!

とよ田: それが実は、Twitterでは「これやるよー」って予告カットをチラ見せで載せちゃってて(笑)

吉川: えー! それはかなり大変などんでん返しだったんですね(笑)

とよ田: そこからはしばらく、ぐでーっと死んでましたね。芸人さんがネタ作りにギャラが発生しないのと同じで、漫画家も企画の段階では1円も出ないんですよ。半年間タダ働きしたことになって、そのショックがでかくて、ぐでーっと(笑)

吉川: うわー、それはめちゃくちゃきついですよねー……。

とよ田: それでTwitterで「いろんな事情があって連載できなくなっちゃいました」ってつぶやいたら、前に金剛寺さんを面白いって言ってくれていた知り合いの編集さんから「Twitter見ましたよ!やったー!」って連絡あって。

吉川: え?

とよ田: 「今フリーなんだったらうちでやりましょうよ」って(笑)

吉川: なるほど!(笑)

とよ田: すごくお世話になってる編集さんなんですよ、金剛寺さんが重版かかったときも「僕たちは間違ってなかったんだ!」って電話越しに一緒に泣いてくれたり(笑)

吉川: なるほど、それはめちゃくちゃいい関係ですね。

とよ田: そうそう。でも結局、いろいろあってその雑誌では描かなくなったんですよ。で、また暇になってぐでーっと死んでたら、ある日、漫画家仲間のカメントツくんと仲良いからってことで「イベントで使うサプライズビデオレターにとよ田さんを撮りたい」って当時ゲッサンの副編集長(現編集長)の星野さんが家に来てね。

吉川: 楽しそうなイベントですね(笑)

とよ田: そもそも僕がカメントツくんと仲良くなったのも偶然で、たまたま入った近所のごはん屋さんでカメントツくんのサインを見つけてTwitterにアップしたら「僕近所に住んでます!会いたいです!」って連絡をくれて、会って友達になったっていう(笑)

吉川: すごい偶然とスピード感ですね(笑)

とよ田: で、その年の小学館の忘年会にカメントツくんを誘って一緒に行ったら、そのときにゲッサンの星野さんがカメントツくんに声をかけて、そこから連載(『カメントツの漫画ならず道』)になったんですよ。

吉川: とよ田さんはお二人をつなげた漫画のキューピッドだったんですね!

とよ田: ここでさっきの話に戻るんだけど、僕が死んでたタイミングで家にビデオレターを撮りに来た星野さんに、それまでの経緯を話して『金剛寺さんは面倒くさい』のネームを見せてみたら「これ面白いじゃないですか、ウチでやりましょうよ!」って言ってくれて。

吉川: おー! ここでついに!

とよ田: もしもあのとき、カメントツくんのサインを見つけて撮ってなかったら。忘年会でカメントツくんと星野さんが出会ってなかったら。深海の漫画を半年間考えてボツにしてなかったら。星野さんがビデオレターを撮りに来てなかったら。劇画狼さんで金剛寺さんがバズってなかったら。編集長が年の暮れにちゃぶ台返しをした僕のことを受け入れてくれなかったら。すべてがなければ『金剛寺さんは面倒臭い』は連載してなかったんです。

吉川: まさかの漫画と同じ、ルーブ・ゴールドバーグ・マシン的展開!! 鳥肌が止まりません……。

とよ田: なにか一つが掛け違ってもこうはなってなかった。

運命とか偶然とかそういうものを大切にするようになった

吉川: もしかしてご自身のこの運命的な体験があったから、漫画内でもそういったすべてが繋がるような展開をもってきたんでしょうか?

とよ田: 初めての連載のときには、ドラマは運命ではなくて自分の意志で切り開くものにしようと思っていたんですけど、金剛寺さんでは逆に運命とか偶然とかそういうものを大切にするように描いてます。デビューしてから『金剛寺さんは面倒臭い』を描くまで15年くらい間があいてるんですけど、その間に僕の中でなにか心境の変化があったんだろうなって。若い頃って自分ひとりで生きてると思ってるじゃないですか。でも大人になっていろんなものが見えてくるといろんな人にお世話になっている自分がいるんだってことが分かってくる。そういう変化が自分の中にあったんだなって。だから今回、いろんなことが起きて金剛寺さんを連載できるようになったっていうのも、もちろん経験の一つですよね。

吉川: すべての経験がとよ田先生の血肉になっているんですね。

とよ田: だからこそ、それが金剛寺さんにも反映されていろんな人の人生が交錯して物語が紡がれているんだっていう構成になっているんじゃないですかねー。

吉川: なるほど~!!

とよ田: 知らんけど(ボソッ)

吉川: うわぁ! せっかくのいい話だったのに!!(笑)

とよ田: はははは(笑) 僕ね、いい話風にまとめるの得意なんです(笑)

吉川: たしかにめちゃくちゃいい感じにしっかりまとまってました(笑) でも本当に巡り合わせって大事なんだなって思いました。

映画の面白いと思った部分を積極的に取り込んでいる

吉川: 先生の漫画を読んで思っていたのですが、先生って映画お好きですよね?

とよ田: めちゃめちゃ好きです。

吉川: 僕も映画好きでよく観るんですが「アラン・スミシー」って名前とか映画好きじゃないと出てこないですもん。

とよ田: あのキャラクターは『イコライザー』のデンゼル・ワシントンですよ(笑)

吉川: やっぱり! 名前も、何かしらの事情で映画監督が降板したりしたときにクレジットする恒例の架空の名前ですもんねアラン・スミシーって。

とよ田: そうそう、今はもう使われてないけど、長い間使われている名前で、すごい多作なんですよね。駄作から名作までスピルバーグ以上に幅があるなーと思ったら、そういう事情の実際には存在しない架空の名前っていう(笑) 金剛寺さんのアラン・スミシーは某国の諜報員だったんだけど、過去を全部消して日本に逃げてきているのね、設定として。それで何者でもない人物っていう意味で皮肉で自分に「アラン・スミシー」っていう名前を付けたっていう(笑)

吉川: なるほどー!! そこまで意味があるとは思ってませんでした!(笑) これはいろいろ裏設定とか聞いていきたくなっちゃいますね。

とよ田: 本編とは大きく関わりのない話ですけど(笑)

吉川: その言葉を生で聞けるとは!(笑)

©︎とよ田みのる/小学館

 

©︎とよ田みのる/小学館

 

吉川: ちなみに構図が面白いシーンが多々見受けられるんですが、これも映画の影響もあったりするんでしょうか?

とよ田: 実は自分の絵の下手さが嫌で一時期映画のスケッチをずっとやっていたんです。自分の好きな映画だったら続くかなーと思って、こんなふうに。(スマホを見せる)

吉川: うわ! めちゃくちゃすごい!

 

 

 

とよ田: ちょうど金剛寺さんを作っている頃かな。『スターウォーズ』が好きでノートをいっぱい買ってたんだけど使い道がなくて、暇な時期があったから「いまのうちに画力アップしておく練習でスケッチに使えばいいんだ」と思って。

吉川: どれも人物の表情や構図が素敵ですね。全部でどれくらい描かれたんですか?

とよ田: ノート5冊分くらいかなぁ。

吉川: 5冊も! すごい!

とよ田: 絵が上手い人はもっと描いてますよ。

吉川: 当たり前といえばそうですけど、スケッチなので普段の絵とは似てないリアルタッチなのもギャップがあっていいですね。こういうのがまた集大成として金剛寺さんに現れているんですね。最近(2019/3/25現在)観た映画で好きだったものってありますか?

とよ田: 『スパイダーマン: スパイダーバース』でしょうやっぱり!

吉川: 実はまだ観れてないんですが、めちゃめちゃ話題になってますよね!

とよ田: 主人公がグラフィティっていって壁にスプレーでイラストを描いているんだけど、映画自体がもうグラフィティアートみたいな感じでものすごく美しくって。CG映画なんだけどCGに手描きで足してるのかな、まるで手描きのように見える瞬間っていうのがいくつもあっていいんですよ。「これはコミックですよ」っていうネタ元を映像として表しているというか、コミック的な吹き出しが急に現れたりとか、コミック的な記号が出てきたりとか。「『金剛寺さんは面倒臭い』はこの人達にアニメ化してほしい!」って思いましたね(笑)

吉川: 映像的快感に溢れてそうですね。それでいうと金剛寺さんも視覚的な気持ち良さやこだわりが随所に感じられます。第一話冒頭の見開きで金剛寺さんが理詰めで話すシーンの吹き出しの矢印、フォントが違ったり、すごろくみたいにスタートやゴールがあったり! 画面内が読む楽しさに溢れています! 擬音も特徴的ですよね!

 

©︎とよ田みのる/小学館

 

とよ田: 擬音はよく褒められますね。

吉川: 特に好きだったのが1巻で金剛寺さんが朝ごはんを作る場面! ネギを切ったり、卵を割ったりする擬音ごとに文字の形と音が視覚で見えるんです!

 

©︎とよ田みのる/小学館

©︎とよ田みのる/小学館

 

とよ田: 想像で音が聞こえたらいいなって思って。実はそのシーンで出てくる音符は実際の譜面を見ながら並べて描いたんですよ。「きらきら星」か「かえるのがっしょう」だったかな。

吉川: そうだったんですね! もしアニメ化するってことになったら漫画ならではの表現が映像内でどうなっていくのかも気になるところですよね。それこそスパイダーバースのようにするのか。

とよ田: 本当にあの監督にやってほしいよね(笑)

吉川: そうなったらすごいですね!

「これやりてーなー!」でやってみた

吉川: 金剛寺さんに出てくるいろんな人たちがそれぞれにいろんなドラマを抱えているっていうのがとてもいいですよね。

とよ田: みんな一人一人が自分の人生の主役じゃないですか。そのときスポットライトがどこに当たってるかっていう話であって、この物語ではスポットライトがこの二人に当たっているってだけですね。参考にしたものの一つに『ラン・ローラ・ラン』っていうドイツ映画があって、あるとき彼氏から電話がかかってきて20分で10万マルク作らなきゃいけない状況になるんだけど失敗してしまう。「やり直し」と言うとまた同じ時間からスタートして違う選択肢をとって違う結末に向かっていくという実験的な映画で、道端でぶつかった人のその後の人生がスライドショーのようにパッパッて映っていくシーンがあるんですよ。それが選択によってすれ違った人達のその後の人生がバタフライエフェクト的に幸せになったり不幸になったり様々に変化していく。

吉川: これも上手く噛み砕いて作品に活かしてたんですね。もしかして第2話で二人が手をつないだことで周りのみんなが幸せになるっていう展開って……?

とよ田: そうそう。それもそうだし、あと最新話でもそういうことやっていて。金剛寺さんがガチャガチャを引いた結果で結末が変わっていくというもので、雑誌掲載時は他の連載を跨いでページを移動するという形式の掲載になってるんですけど、単行本にするときはまた再構成する予定です。まさに『ラン・ローラ・ラン』的な展開になってる。

吉川: すごい、雑誌ならではの形でマルチエンディングをされているとは……。そういった実験的な試みでいうと最近Netflixで観れる『ブラック・ミラー: バンダースナッチ』 っていう作品では観る人が選んだ選択肢によって映像や展開が変わっていきますよね。

とよ田: そう、僕もまさに、それを観たタイミングで「あ、これやりてーなー!」って思ったんですよ。

吉川: 『金剛寺さんは面倒臭い』の目新しさって、先生のそういう新しいものへの嗅覚から来てるのかもしれませんね。

イマジネーションの視覚化

吉川: 他にもこだわっている部分ってあるんでしょうか?

とよ田: イマジネーションの視覚化とか比喩表現は積極的に多く入れたいなと思っていますね。例えば一話でいうと天使とか。

吉川: そこも好きなシーンです! 天使が撃つのが弓矢じゃなくてリボルバー銃なんですよね! しかも三発! これはどうして三発なんでしょうか?

 

©︎とよ田みのる/小学館

 

とよ田: あー(笑) これね、腹に二発と頭に一発は確実に仕留めるときのマニュアルなんです(笑) ははは!

吉川: 物騒な!(笑) じゃあこれもただ撃ってるんじゃなくて、完全に仕留めようとしてるっていう比喩表現なんですね。

とよ田: そうそうそう、殺しにきてるっていうね(笑) どっかの軍隊かなんかのマニュアルにあるって聞いたなーとか思い出しながら描いてます(笑)

吉川: 引き出しがめちゃくちゃ多いですね……!

とよ田: イメージのシーンでいうと、頭の中にしかないものが出てくるときは絵のタッチを変えていて、普段はGペンで描いてるんだけど、イマジネーションのシーンは鉛筆で描いているんですよ。だからタッチが柔らかいでしょ。鉛筆って昔は印刷に出なかったんですけど、最近は自分でデジタルでできるから鉛筆で描いてグレーでパソコンに取り込んでるんです。

吉川: 金剛寺さんが大切な記憶を抱きしめてそっとしまう心の保管庫のシーンすごく好きなんですが、ここもよく見たら鉛筆ですね!

とよ田: 尊敬している片山ユキヲ先生(現在『夜明けの旅団』連載中)が描いていた『空色動画』(講談社)、『花もて語れ』(小学館)の二作品がすごく好きなんです。『空色動画』がアニメーション動画を作る女子高生たちが主役で、アニメを描いていると描いてるものがポンッとここに出てきたりする、まさにイマジネーションの視覚化。『花もて語れ』は朗読漫画なんだけど、主人公の朗読のイメージがすごすぎて聞いた人にはビジョンが見える。そのビジョンが墨絵かなにかでグレーで描いてあって完全に異世界感があって、そこからいただいてるんです。上手いなー僕もやりたいなーって。

吉川: オマージュというか漫画表現へのリスペクトみたいな形で着想を得ているんですね。

漫画を描き始めたきっかけ

吉川: 子どもの頃にノートに漫画描いて見せてる子たちっていたじゃないですか。先生も描いてましたか?

とよ田: 僕は全然そういうことしなかったですね。初めて漫画描いたのが25歳とかですし。漫画はずっと好きで読んでいたので元々読む方のプロで、未だに憧れの漫画家さんに会ったら「あ、あ、あの、だ、大好きです!」みたいな感じになっちゃいます(笑)

吉川: ミーハーな感じに!(笑) そこから何がきっかけで描こうと思ったんでしょうか?

とよ田: 漫画が好きで漫画家になろうとは思わなかったんですけど、でもこんだけ好きなんだから自分でもやってみようと思ったんじゃないですかね。聞かれたらよく言うんだけど、僕は自分でも納得できる本当に面白い1本を描いてみたいっていう気持ちでずっと漫画家を続けています。

吉川: めちゃくちゃかっこいいですね。自分の作品に納得できることってなかなかないものですよね。

とよ田: そう、一点の曇りもない完璧な出来っていうのは今後もあり得ないと思ってる。もし100%納得できたら描かなくなるんじゃないですかね。いや、どうだろう、描くかも(笑)

吉川: ちなみにデビューするまではどんな感じだったんですか?

とよ田: クソニートでした。

吉川: クソニート!?

とよ田: バイトとかはしていましたけど実家に寄生していましたね。

吉川: どんなバイトをされていたんですか?

とよ田: 映画好きだったのでビデオ屋とかやってましたね。あとは……、大学在学中に漫画を描いていたんですけど、子どもの頃に島育ちだったこともあって南の島憧れがあって、卒業後に西表島で3ヶ月くらい住み込みのバイトしていました。沖縄の離島の中では一番大きいけど8割ジャングルだから本屋さんもなくて。やることもないから友達に手紙書いてお金入れて「プレステ送って下さい」って(笑) 結局『ファイナルファンタジーⅦ』を4周くらいしましたよ(笑)

吉川: 4周はやりすぎです(笑) では帰ってきてから本格的に漫画を描いていったんですね。

とよ田: そうですね、28歳で賞で佳作をもらって、そこから10本くらい描いて2002年のアフタヌーン四季賞で大賞とった『ラブロマ』が載って。その一話で終わるはずだったから二人が出会って付き合って、で終わったんだけど、「人気があったから続き描け」って言われて「終わってんじゃないですか!」って(笑)

吉川: ははは! ラブコメって付き合うまでが大事ですもんね!

とよ田: 「こんなところからどうしたらいいんですか!」って(笑)でもデビューできるチャンスだからここでやるしかないなってことで血反吐はきながら「うー、わかんない……」ってやりました(笑)

吉川: それでよく5巻分も連載しましたよね!

とよ田: ほんと死にそうになりましたよ。よく「普通、付き合う付き合わないで引っ張るのに、付き合うところからスタートって新鮮でした!」って言われるんですけど、「終わらせるつもりだったんだよ!」って(笑) でもやってみたら、実際に女の子と付き合う前より付き合ってからのほうがいろいろ大変だったりするじゃないですか。だから意外と描くことあるなーって。まあでも大変でしたけど漫画家になれてよかったのかもしれないですね。ほんとにどうしようもない毎日送ってたから(笑)

子どもが生まれてからの変化

吉川: 先生はいつもどれくらいのスケジュールで漫画を描かれてるんですか?

とよ田: 理想はネーム二週間、作画二週間くらいなんだけど、実際はネームが10日くらいで、1日休んで作画が12、3日ぶっ続けって感じかなぁ。それで余ってる時間で映画観たりだらだらしちゃってますね。それで次のネームまで休みつつ、設定とかアイデアを思いついたらメモしながらって感じです。あとは取材行ったり背景用の写真撮ったり。このあとも取材の予定で、ヘリでナイトクルージングする予定です。

吉川: ヘリですか!? ということは空撮とかそういうシーンが今後出てくるのを楽しみにしてます!(笑) ちなみに漫画家になられてから結婚、そしてお子さんが生まれて、とよ田先生の漫画になにか変化ってありましたか?

とよ田: 子どものことを『最近の赤さん』で描けるようになったとかネタの幅が広がって嬉しいなってのはあるかな。僕が漫画で一番好きなのって、こんな表現見たことがなかったとか新しい価値観が得られることだと思うんですよね。自分の人生の中でも子どもが生まれたときには、いままで感じたことのないようなものすごい価値観をたくさん手に入れて「うわー、これ描きたい! これ発表したい!」っていう気持ちで子育ての漫画を描いていましたね。こんなに心が震えたことないなと思って、その気持ちを忘れないうちに描いておかないと!って。

吉川: 娘さんが大きくなって読んだらたまらないでしょうね。

とよ田: 娘に読んでもらいたいってのはあったので。めちゃめちゃ君のこと大好きだったんだよっていうのを覚えておいてもらいたいなって。

吉川: めっちゃくちゃいいですねー……。こんなお父さん最高です……。

とよ田: 育児漫画を描く人って結構いるじゃないですか。それはもう売れるとかそういうのじゃなくて、今までにない体験を自分がしているから単純に描きたくなるんだと思いますよ。だから僕、いろんな体験するとラッキー! って思うんですよ、交通事故とかでも。「これはなにかネタになるぞ! 描ける幅がいま広がったぞ!」って。新しい価値観が入ると嬉しいんですよ。そういうのがあるとやっぱり描かずにはいられなくなるんじゃないですかねー。

金剛寺さんは死ぬところまで描きたい

吉川: 4巻収録でしょうか、「おっぱいいいですか?」の回がすごくいいなと思って。いままで断片的に未来が描かれることはあったけど、その回だけであっという間にときが過ぎていく思い切りの良さが気持ちいい。

とよ田: 『金剛寺さんは面倒臭い』に関しては、出し惜しみせずにもっと自由にバンバン描いたほうがいいかなって思っています。『ラブロマ』のときは描けなかったけど、『金剛寺さんは面倒臭い』ではちゃんと子ども生んで育てるところまで描きたくて。命のテーマとか死のテーマも描けたらいいなって。

吉川: やはりそれもご自身にお子さん生まれたからこそでしょうか?

とよ田: そうそう、やっぱりそれまでは想像ができなかったから。想像で描くのも漫画だけど、体験したことだと自信をもって堂々と描きたくなっちゃうっていうのはありますよね。

吉川: 実体験があると漫画に説得力が生まれますもんね。この話は恋愛にとどまらず、もっと長いスパンの二人の人生の話だったんだなーと。だから変に引っ張らずに濃密で面白いんですね。

とよ田: 僕が漫画読むときに引っ張るのが好きじゃないんですよ。どうでもいい誤解とか、コミュニケーション不足による喧嘩とか、すれ違いってモヤモヤするじゃないですか。違うんだよ!って、話せよ!って(笑) 簡潔にバン!バン!バン!って描きたいですね。

吉川: たしかにこの二人はお互い向き合ってしっかりぶつかっていきます。

とよ田: そうそう、すれ違わずぶつかっても描けることはたくさんあるし。この連載始めるときに辛かったから、「もう知らねーよ! 好きなこと全部描くよ!って半分ヤケクソになって描いてたので読者の方はそれを面白がってくれたんですかねー。

吉川: 一連の出来事でフラストレーションが爆発していい方向に振り切れたのかもしれませんね。

ムキになった伏線回収でいい話ができた

吉川: ちなみに作品のエゴサーチとかもされるんですか?

とよ田: しますよ。それでいうと、3話の金剛寺さんのお父さんと樺山くんが血闘するシーンで、二人の闘気で蜉蝣(かげろう)が爆ぜるとこがあるんだけど、みんな幸せになるのに蜉蝣だけ可哀想って言ってる人が結構多くて、友達の澤江ポンプ(『パンダ探偵社』連載中)にも言われてイラッとして、「あれ伏線だからな!」って。それを元にした話を3巻で描いてるんです。

吉川: え? この時点ですでに伏線にしていたってことですか?

とよ田: いやいや、その時は伏線じゃなかった(笑) けど、みんなが言うからムキになって、あの蜉蝣は実は死ぬべくして死んでいたっていう話にしたんです。

吉川: えー! 蜉蝣の救済策が結果オーライでめちゃくちゃ深みが増したいい展開になってるじゃないですか!(笑) 記憶を失っても存在する樺山くんの無償の愛というか優しさの根源的な部分って実はそこにあったんだっていうのがそこでめちゃくちゃ納得するのに、それがまさかムキになって描いた話だったとは!(笑)

とよ田: 僕、まとめるの得意なんです(笑)

吉川: あ! ここでインタビュー序盤の伏線まで回収されちゃいました! まとめるの上手すぎる!(笑)  最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

とよ田: なんだろう、読んでね、としか(笑) これからテンション上げていきます。もっと面白いもん作ります。本当に。それしか言えないです。

吉川: 読みます!(笑) ありがとうございます!

まとめ

とよ田みのる先生のインタビュー、いかがだったでしょうか。

とよ田先生は、豊富な話題と朗らかな人柄で、一緒にいてとても楽しい時間を過ごせました!

ネタに詰まったときのリフレッシュの方法をお聞きしたら、「スパに行って31℃程度のお風呂にずっと浸かり続けて、たまにサウナ入って頭がクラクラしてきたときにゲートが開く感じがして、あっち側から何かを持って来れる気がする」というのが今のお気に入りと教えてくれました。
行き詰まったら皆さんも試してみましょう!

最後に、ヘリの時間だと言って颯爽と立ち去る姿がかっこよかったです!
とよ田みのる先生、ありがとうございました!

 

めちゃくちゃ素敵な色紙を描いてもらいました! 先生ありがとうございます!

 

このヒロインには、付け入る隙などない!

口を開けば正論!正論!正論!
金剛寺さんはいつも正しい!
おまけに学業優秀&柔道の名手!
隙などまったくない彼女に、樺山くんは…よりによって恋をした!
彼の運命やいかに!?

ちなみに本編とは大きく関わりのないことだがッ!!
この世界は地獄と繋がっているッ!!

「ラブロマ」「友達100人できるかな」「タケヲちゃん物怪録」のとよ田みのるが贈るロジカルピュアラブストーリー!!

(C)とよ田みのる/小学館
引用元: Comee.net

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